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【映画ルーム(2) いつか晴れた日に(理知と感情) 19世紀英国版『この世界の片隅で 』 8点】

【かわまりの映画ルーム(2)  いつか晴れた日に(理知と感情)   19世紀英国版『この世界の片隅で 』8点】平均点:7.48 / 10点(Review 92人)   1995年【米・英】 上映時間:136分.   クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=31

 

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【あらすじ】

オースティンの原作の題名「分別と感性」は思慮深い長女と感性豊かな次女のことか・・・。ダッシュウッド三姉妹は父の遺言に従って住んでいた屋敷を腹違いの兄に譲り、質素な田舎の家で細々と暮らすことになった。新しい環境の中、長女エリノア(エマ・トンプソン)は兄嫁の弟エドワード(ヒュー・グラント)に恋とも友情ともつかない気持ちを抱き、次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)は偶然出会った若い紳士に持参金のない自分の身も省みず情熱を燃え上がらせる。愛と金銭欲が微妙に絡む19世紀イギリス地主階級の物語。

 

【かわまりのレビュー】

ジェーン・オースティンのような多作な作家が今の世にいてパソコンを使って仕事をしていたら、ハーレクィン・ロマンスやら昼メロの脚本なんかでひっぱりだこで大儲けしていたことでしょう。登場人物も全て普通の女の子に普通の男の子に普通の売れ残りの男性(おっと失礼)だしテーマはいつもロマンスだし・・・でも、幸か不幸か、オースティンは19世紀のイギリスの郷紳(田舎の地主)階級に生まれたお嬢さんでお金にも困らず、パソコンももたず、作品の中でも出てくるように羽ペンを使って日がな一日優雅にもの書きをやっていればよかったのです。だから、普通の女の子や男の子やおじさんやおばさんの日常生活を描写していても、そこに商業主義とは縁遠い人生への深い洞察を反映させる余地があった・・・というのが私の意見であります。夏目漱石が「則天去私そのものだ。」と絶賛したという「高慢と偏見」も普通の人間の普通の営みを描写したものらしいですが、豪華キャストと英国のすばらしい現地ロケでもう一度映画化してほしいです。

 

 

10点の人のコメント: 

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=31

8点(最頻出点)の人のコメント: 

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=31

5点の人のコメント: 

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=6&TITLE_NO=31

 

【独り言】

ジェーン・オースティンがこの作品の原作"Sense and Sensibility” を書いた頃、ヨーロッパはトンデモなの戦争真っ只中だったことなんて到底信じられないでしょう。でもそうなんです。しかもこの作品の舞台になっているイギリスと革命の嵐を経てナポレオンが台頭したフランスの間で天下分け目の戦いの真っ最中だったのです。もっとも海洋での覇権はすでにイギリスに確定していてそれはダッシュウッド三姉妹のお転婆の末娘が世界地理に通じていたことからも伺えます。でもオースティンはあくまでもイギリス地主階級の日常生活から目をそらしません。作品の巻頭で領有地と屋敷の所有権が変わったために大勢の使用人が解雇され、その中で若い男性は大陸での英仏の争いに駆り出されていくのですが、オースティンは敢えて時のヨーロッパの激動から目を背けダッシュウッド姉妹の未来に焦点を合わせます。そして、両親の意向に逆らって祈りを仕事に選び、しっかり者の長女エリノアに想いを寄せる若いエドワード・フェラス、そして対ナポレオンの海戦で精力を費やしたかのような、当時ではもう中年の域に入っていて初々しくて多才な次女マリアンヌに癒しを求めるブランドン大佐が現れるのです。この二人の男性を通じてダッシュウッド姉妹は世界と繋がる、なんて考えたら考えすぎでしょうか?


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【映画ルーム(26)  この世界の片隅に  〜  強く生きる 7点】https://kawamari7.hatenablog.com/entry/2019/08/18/120929