かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(1) ベン・ハー 〜 イエス・キリストの物語】

【かわまりの映画ルーム(1)  ベン・ハー  〜  イエス・キリストの物語  10点】平均点:8.02 / 10点(Review 185人)  1959年【米】 上映時間:212分    クレジット(配役と製作者)

 

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【あらすじ】

ローマが領土を拡大していた共和制から帝政への移行期の物語。ユダヤの豪商ベン・ハーとローマの役人メッサラは友人同士だったが、ベン・ハーがローマへの協力を拒否したため、メッサラはベンハーの財産を没収し、彼をガレー船の漕ぎ手におとしめる。3年間の奴隷生活の間にベン・ハーはローマの武将の信頼を得て海戦の最中に武将を助けて勝利に導く。ローマで歓待を受けた後にベン・ハーは久々にユダヤの地に戻るが、不当で残酷な制裁を受けて離散した家族や以前の使用人達を探し当てた時、ベン・ハーは復讐の鬼と化していた。

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 もう一度見たのですが、始めにちゃんと「イエス・キリストの物語」と書いてあるではありませんか。やはり、この作品は魂の救済をテーマとしているのです。復讐を遂げた後の人間というのは人生のバロメーターがマイナスからゼロになったようなもので虚脱感はあっても建設的な人生を築く土台はないわけだし、あれほどの目にあったらベンハーほどの強靭な精神の持ち主でも(といおうか強靭な精神の持ち主だからこそ)心はぼろぼろで「それは不当だ!」と叫んで夜中に飛び起きたりやなんかして(ここまで描写したらサイコホラーかコメディーになりますが)、元に戻るには数十回の治療セッションが必要なはずなのに、イエス・キリストは2回会っただけで治してしまうなんてすごいですね。さもなければベン・ハーはきっと、一生の間メッサラと同様の人間を攻撃し続けるサイコで終わっていましたよ。イエス・キリストはこの物語の頃に「やあやあ我こそは旧約聖書イザヤ書に予言されたる救世主なり・・・。」と言って(自分で言ったのではなくて後世の人が言ったことにして)登場、ユダヤ人達に「わてらの目の黒いうちにユダヤ王国は主権を回復するのかいな?(注:傀儡ユダヤ王国は存在)」と期待させながら「王国は汝等の心の中にあり。」なんて言ったものだから、「そりゃインチキや!」と処刑されてしまい、弟子たちのその後の努力によってその教えが各地に広まった(以上は新約聖書の超ダイジェスト版)そうですが、ユダヤ人の中にもキリストが正真正銘の救世主だと思った人もいたはずで、そういったユダヤ人はユダヤ王国の再興後に官僚になったり政治献金をするあてのない下積みだったと考えられがちです。でもベンハーのように金や実力のあるユダヤ人も結構キリスト教に帰依したのではないでしょうか。何しろ復讐は律法に従って実行すればいいし、金は自分で稼げばいいし、地獄の沙汰は金次第(これは浪速商人は言ってもユダヤ商人は言いそうにない)だけれど、生きているうちに心の平安を得ることは非常にむずかしいからです。従来の医療で直せない心の病を治すために精神分析を始めたユダヤ人医師フロイトのお弟子さんたち、聞いてくれていますか?

 

 

10点(最頻出点)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=995

9点の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=10&TITLE_NO=995

8点の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=995

 

【独り言】

点数が低い人の傾向としてクライマックスの戦車のシーンの後でベン・ハーイエス・キリストの出会いが宗教臭くて余計だという感想があります。点数高い人も点数源は圧巻の戦車シーンだったりします。でもわたしは敢えて戦車シーンはベン・ハーの復讐心の高揚と捉え、復習を遂げた後の彼の虚無感と癒しに着目してほしいと思います。

ユダヤ人の救済のために出現するキリストはユダヤ人にとってはユダヤ王国を再興する人物でなければなりませんでした。しかし彼らの前に現れたイエスはおそらく強大な軍事国家であるローマが拡大して中東から西アジアに至る地域を席巻しようとしている現実に直面し、彼らが参加に収めた民族の安寧を願う方向に考え方を変えていったのです。宗教的革命家としてのイエス・キリストの考え方の変遷はその生前の行いと死、そして復活を記述した新約聖書中の四使徒による福音書の端々に描かれているが、同じく新約聖書中の使徒行伝に記述されているように、ローマ市民であり多国語に通じるさうろ(パウロ)を改心させて熱心な伝道師にすることによって後の世界宗教に発展する礎石が築かれる。

わたしのレビューでわたしは伝統に固執するユダヤ人に大阪弁を喋らせて見たかった。その意図はユダヤ人と大阪人の両者が宗教に熱心で多くが商人として成功しているからである。しかし、主役はあくまで作品巻頭にあるように、顔も現さず台詞もないイエス・キリストなのである。ベン・ハーを演じたチャールトン・ヘストンの復讐に向かう時の表情をよく頭に留めてイエス・キリストを仰ぎ見る時の表情と比較して見てほしい。キリスト教世界宗教になった理由がここでもわかる。

 

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