かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(38) ハドソン川の奇跡 〜 実在するヒーローの心の内 9点】

【かわまりの映画ルーム(38) ハドソン川の奇跡 〜 実在するヒーローの心の内  9点】平均点:7.39 / 10点(Review 87人)  2016年【米】 上映時間:96分.  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。

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【あらすじ】

2009年1月、USエアウェイズ1549便はニューヨークの空港を離陸した直後に鳥の大群に遭遇して両エンジンの機能を失うが、機長サレンバーガー(通称サリー)の冷静な判断によって旅客機はハドソン河に不時着して乗客乗員全員が助かる。しかしその後、国内外のメディアなどに英雄視されながらも老練な機長サリーの脳裏にはもし判断を誤っていたら起きていたはずの大惨事の光景がまざまざと去来し、しかも副機長と共に「空港に戻れたはずだ。」とシミレーション結果に基づいて主張する政府当局の追及の矢面に立たされる。

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 町の映画館で見た後、見逃したエンドロールを見にIMAX劇場に行って来ました。こういう話は大好きです。素手だと本当に弱い動物の人間と人間の手足や頭脳の延長としてのメカとの関係、特にメカと共に未曾有だの想定外だのに直面した際の人間の優れた判断や決して諦めずに事態を打開しようとする勇気の話というのはたまらないです。東電福島第一原発の誰かの話も作って欲しいです。同じような基準でかつて「アポロ13号(これもトム・ハンクスが主演です。まだ見ていない方は必見!)」に満点をつけたのでこの作品も、と言いたいのですがどなたかが指摘してくださっているように邦題に問題があるのでマイナス1点にします。クリント・イーストウッドさんごめんなさい。それから2度目の鑑賞では、悪役視される政府当局者から、どんな事件からも後世のパイロットが教訓にできる内容を引き出そうとするプロ意識を感じました。

エンドロールの本物のサリー機長とその夫人を含むオールスター登場ですが、撮影チームが購入した1549便と同型の廃機に映画撮影用のお化粧が施され、その前で撮影されたようです。同便に搭乗していた旅客にはニューヨークからシャーロットに行く人、帰る人、乗り継ぎの人等がいたと思いますが、その中の多くが乗客役として映画撮影に協力することとサリー機長に再会するために自腹を切って出演料なしでも駆けつけたそうで心が温まります。それから救助に一番乗りで駆けつけたNY WATERWAYの太った船長は実際に一番乗りで駆けつけた船の船長で乗客と同様の友情出演だそうです。

監督クリント・イーストウッド浪花節調や演歌調の作品(例えば「マディソン郡の橋」や「ミリオンダラーベービー」)が得意なのかと思ったらこういうノンフィクション作品も作れるんですね。でもどんなサクセスストーリーや本作品ような「終わりよければ全て良し」の英雄譚も事実を掘り下げることによって浪花節調ではなくても真のヒューマンドラマ、例えばプロフェッショナリズムなどが浮き彫りになってくるものなのですね。今後もできる限りこういう作品を作り続けて欲しいです。

NYPD(ニューヨーク市警)、FDNY(ニューヨーク消防)、NY WATERWAY(短距離旅客運搬の商業ライン)などがこぞって不時着した旅客機を目指して救助に駆けつけるシーンは圧巻でしたがNY-NJ Commuter Ferryが現場近くで航行していたはずなのに一隻も見えず、当時ニュージャージー州に住んでいたわたしとしては不満です。でもこれは減点対象ではありません。

 

10点と9点の人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=23687

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=10&TITLE_NO=23687

8点人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=23687

7点(再頻出点)の人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=8&TITLE_NO=23687

3点(最低点)の人のコメントから

《ネタバレ》 重大事故、事象が起きればあらゆる可能性を考えて、一見善良に見える対象でさえも平等に冷徹に厳しい検討対象とするのは当然のことである。
それは今回の機長側から見れば、「経験のない、前例のないトラブルを自分の経験と技量で切り抜けたのに、その俺すら疑いの視点で接してくるのか」とある種の恐怖心を抱かせるものであろうが、それは重大事故の検証という場面では仕方のないことである。機長というのはそういう責任をそもそも背負っているものなのだ。

それをメソメソと「ヒーローの俺がこんな扱いを」、「世間はみんな歓待してくれるけど実際はこんなプレッシャーを受けてたんだよ」的な描写をしても全然かっこよくないね。

毅然とむしろ事故調査側の立場に立って機長も事故の検証を、「自らが本当に正しかったかどうか?」を検討してこそ、真に素晴らしい機長となりえたと思うんだけどね。この映画はそういう描き方をすべきだったと思う。そこまで思いが至らないのがアメリカ人なのかね。いや、アメリカ人も本当の知識層はそうすると思うんだよね。クリントイーストウッドみたいな表層的な、水に浮かんだ油みたいな奴がとるとこういう映画になるんだよ。

航空機事故に限らず、
例えば医療事故なんてこんなのばっかり。医師は人間にしかつとまらない。パラメーターをいくつか入れたところで経験は目に見えないし機械に打ち込むこともできない。それなのに何か医療事故(医療ミスじゃないよ)があると、ど素人の警察、患者、裁判官、弁護士が「本にかいてあること」を盾に、あるいは「現場にいなかった専門家」の意見を恣意的に利用して素人なりの結論に持っていく。説明できない経験に基づく瞬時の判断は正当性が証明できないから負けていく。
善意によって全力で人を助けようとしても結果責任を負わせようとする。それが今の世の中。

他にもある。長野の大学生乗せた夜行スキーバスがガードレール突き破った事故だ。あれなんてまだ何もわからないうちから「運転手個人の責任」を新聞もTVも報道。さて、ほとぼりも醒めた最近、バスの老朽化点検を指示する国の通達が出たね?

世の中、現実のほうがよほど闇が多いんじゃない?【小鮒】さん [映画館(字幕)] 3点

 

【独り言】

 


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