かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(144) ドンファン 〜 伝説的プレイボーイの戯画 7点】

【かわまりの映画ルーム(144) ドンファン 〜 伝説的プレイボーイの戯画 7点】 平均点:6.72 / 10点(Review 57人)   1995年【米】 上映時間:97分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=236

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

モーツアルトのオペラに描かれているような悪辣なプレイボーイか、はたまた英国詩人バイロン卿が描いたような全ての女性を魅了する瑞々しい好青年か・・・。芸達者なジョニー・デップが演じる現代のドン・ファンはメキシコから流れてきたという精神異常者。往年の色男マーロン・ブランドが扮する精神科医は自殺未遂で保護下に置かれたドン・ファン(ジョニー・デ・マルコ)を治療しようとし、逆にドン・ファンの目眩めく妄想の世界に引き込まれていく。クラシックからラテンまでのBGMに彩られたラブ・コメディー。

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 自分で「あらすじ」に書いた質問に自分で答えるなら、本作品のドン・ファンモーツアルト版とバイロン版のドン・ファンを足して二で割ったような人物です。十分に瑞々しくて魅力的だけれど「女は愛され、触られることを欲している楽器のようなもの。」なんて悟ったような口もきいています。英国詩人バイロン卿の原作を読んでいるともっと笑えるかもしれません。(ただし、島の乙女とトルコの後宮の逸話の順番が逆ですが・・・。)しかし、現代版ドン・ファンが妄想癖があるただの兄ちゃんというのは少し寂しいです。最後、太ったマーロン・ブランドが「彼の精神異常は伝染性・・・。」と言いながら浜辺で踊るシーンが唯一の救いでしょうか。

 

ご近所(わたしの前と前の前)の人のレビュー

1. 《ネタバレ》 美しい妄想だとばっかり思っていたら、話が現実離れすればするほど、それが現実だという傍証が出てきて、物語自体がファンタジックになってくる、という、凝った仕掛けの話である。
ファンタジックなのはいいけど、マーロン・ブランドの巨体は、往年の彼を知っている人間にとっては、ほとんど悪夢の域だな。最初は、これって特殊メイク?と目をこらして見たが、どうも本物だったらしい。着ぐるみのような体つきに、若い頃と変わらぬ青灰色の瞳が、なんともミスマッチで、なかなか不気味だった。
フェイ・ダナウェイが、けっこう愛嬌のあるもうけ役。
デップ様は、彼独特のうさんくささとロマンチックさが、見事にはまっていた。最後に、正気に戻ったと判事を納得させるシーンでは、いままでのスペインなまりがウソのようにふつうの英語になっていて、笑えた。
身近にいた青い鳥をつかまえるには、ここまでややこしい妄想が必要なのだと思うと、そんなに気楽には笑えないのだが。【yhlee】さん [DVD(字幕)] 8点

2.  つじつまの合わない話が、すごくよかった。これ観たあとはなんか幸せ。【のまっと】さん [DVD(字幕)] 8点

 

10 点と9点の人のレビュー
1.  I am Don Juan DeMarcoだけでしびれてしまいました・・・。【ファンファン】さん 10点

2.  これを10点っていうのは、私はジョニーデップにいかれてるんだろうか。(自覚はないが夫にジョニーデップファンと言われている。実際彼の映画はほとんど見ている) でも、ジョニー演じるドンファンでなく、マーロン・ブランドに感情移入した。私も、子供達のお母さんでなくて、夫ともっと恋を楽しもうと思った。人生楽しもうと思わせてくれる映画。私の人生観を変えてくれたことを感謝して10点。マーロン・ブランドが特殊メイクかというくらいデブだったけど、本当はどうなのかな。デブさがちょっと気持ち悪かった。それなのに感情移入できたから素晴らしい映画だったと思いますよ。
【kithy】さん 10点

3.  この際ストーリーなんてもうどーでもいいんです。「一生貴方についていく!!」と決意した人間がここに1人いるだけでこの1本は成功作なんです。子坊脳になったって構いません。お願いだから名前の安売りはほどほどにしてください。貴方にふさわしいのはB級映画なんです。【denny-jo】さん 10点

4.  たぶん映画を作る側や観賞する側も少なからず何らかのロマンスを見せたり見出したりするために映画を作ったり観賞したりするのだと思う。そういう意味でラストの「ロマンス病」という言葉がこの作品をすっきりと爽やかに語り、作る側、観賞する側にロマンスを見出させてくれた。映像(演技)で無言の言葉を語る作品もあるが、この作品は「ロマンス病」という一つの言葉のために映像があったんだなって改めて思った。【ゆきむら】さん 9点(

5.  かなりよかったです。愛を極めてるドンファンさんにマジ憧れます。けっこうファンタジー系好きなんでおもしろかったです。あんなおばあちゃんいたらいいなぁとか思いました。ロマンス病にかかりまくりでした。。。【バカ王子】さん 9点

6.  たぶん映画を作る側や観賞する側も少なからず何らかのロマンスを見せたり見出したりするために映画を作ったり観賞したりするのだと思う。そういう意味でラストの「ロマンス病」という言葉がこの作品をすっきりと爽やかに語り、作る側、観賞する側にロマンスを見出させてくれた。映像(演技)で無言の言葉を語る作品もあるが、この作品は「ロマンス病」という一つの言葉のために映像があったんだなって改めて思った。【ゆきむら】さん 9点

 

低い点数(1点、3点、4点)の人のレビュー

1.  何が面白いのか分からないまま終わってしまった。【もいみ】さん 1点

2.  1回目観て、面白さが分からず再び観た。結果。全く面白くない。正直皆さん勝手にロマンス病にかかっていろよと言いたい。だって、、、久しくときめきが無いのよ!!!なんかみんなラブラブでムカつくわ~~~(T_T)【おっちょ】さん [DVD(字幕)] 1点

3.  この映画の主題歌になったBアダムスの曲が大ヒットし、大好きだったのでこの映画を見たのですが(ジョニー・デップへの期待もあり)、期待が大きすぎたかな?スペイン女性は美しくてよかったけど。 【ぐり】さん 3点

4.  ドンファンはいいやつだけど、正直つまんなかった。フェイ・ダナウェイマーロン・ブランド凄いけどね、いろんな意味で。【kaneko】さん 4点

 

【独り言】

この次に紹介することになる詩人のバイロンパーシー・ビッシュ・シェリーに「フランケンシュタイン」で名前を残したメアリー・シェリーらを描いたスイスを舞台とした作品では文学を志す3人のチーム・リーダーたるバイロンは深刻な精神的危機に直面していました。この頃のバイロンの作品はわりと直裁に自分の感情を吐露したものがほとんどですが、ゲーテにも影響を与えた神秘的で難解な劇詩の「マンフレッド」についで当時の政治状況(ナポレオン失脚後の新秩序、実際には反動体制の構築)を受けて「マンフレッド」の精神性にドロドロした権力闘争などを加味した非常に難解な劇詩を次々と発表していくことになるのです。その中にあって絶筆になった「ドンファン」は簡単に言ってしまえばラブコメで、バイロンの作品をそのうち全部読んで理解してやろうと英文科出身でもないのに大それた目標を持っているわたくしめにとってはほっと一息つける作品なのです。あらすじもほんわか、高得点をつけた方のコメントもロマンス病をアピールするほんわか系が多いことからもわかっていただけるでしょう。ただ、それでもバイロン卿の執筆意図は当時の国際政治の状況と無関係ではないのです。当時、ワーテルローでイギリスのウェリントンに敗れたセントヘレナ島に流されたナポレオンの断罪が進められていましたが、それ以前にナポレオンを大将に掲げるフランスはトラファルガーの海戦でネルソン提督率いるイギリス海軍に敗れて海洋での派遣をイギリスに譲っていました。バイロンはネルソン提督はそこそこ尊敬していたようですが、スコットランド出身のウェリントンは嫌っていて陸の派遣はナポレオンが獲得するべきだったというようなことまで語っています。画家のゴヤの作品にも描かれたようなスペイン市民のナポレオンに対する激しい抵抗を直接見聞した後でさえそうでした。そして、イタリアそこよなく愛したナポレオンの失脚後にナポレオンを支持し、ナポレオンのコルシカ島脱出後に百日天下の軍事力の母体となったイタリア都市国家の凋落を目の当たりにしたバイロンは。。。「英雄なんてこんなもんさ」といった高踏的な姿勢が読者をほっとさせる、バイロンの「ドンファン」はそういった作品です。わたしの点数7点は少し辛めですが、マーロン・ブランド扮する精神科医の「彼のロマンス病は伝染性」と言いながらフェイ・ダナウェイとのっしのっしと踊る様も充分高踏的で、小難しい作品背景を知ってしまったので点数辛めですが9点か9点でもよかったかもしれないと思っています。

 

 

 

 

【映画ルーム(143) カストラート 〜 二度と再現されない人工美 7点】

【かわまりの映画ルーム(143) カストラート 〜 二度と再現されない人工美 7点】平均点:7.03 / 10点(Review 33人)  1994年【伊・仏・ベルギー】 上映時間:106分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=787

 

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【あらすじ】

18世紀。作曲家の兄リカルドとソプラノ歌手の弟カルロはヨーロッパを共に旅して名声を博す。カルロの声と人柄に惹かれた女アレクサンドラは兄弟を追い、ロンドンで大作曲家ヘンデルの歌曲の草稿を盗んでカルロに与える。父を知らないカルロは父のないイギリス貴族の少年と親しくなり、イギリスに腰を据えようとするとするが、カルロが自分の曲を歌っていることを知ったヘンデルは激怒してカルロを化け物呼ばわりする。一方、リカルドは協力者の弟をヘンデルとアレクサンドラに奪われないよう、ヘンデルを超える作品の作曲を目指す。

 

【かわまりのレビュー】

何がグロイといっても、男にしか見えないカルロから超高音の美声が発せられるのが一番グロイと感じました。結婚して女の花道を「ハイ、さよなら。」してしまう歌姫と違って何時でも卓越した芸術の粋を見せてくれるからでしょうか、カストラートというのは正に金持ち王侯貴族のエゴの作り出した男とも女ともいえない存在・・・作中のヘンデルのようにバケモノ呼ばわりするのは本人に選択の余地がなかったカストラートにはあまりに酷です。これに比べれば、舞台の上では女性美の粋を極めても私生活では男であることを許される歌舞伎と京劇の女形のなんと人間的なことか・・・。中国の宦官と比較している方もいるようですが、どちらも爛熟した文化が生んだなんとも形容しがたい存在ですね。兄弟愛も恋愛もそこそこの描写で一風変わった音楽映画という感じ。ヘンデルの「ラルゴ」の歌唱は文句なしにすばらしかったです。

 

10 点(3人)の人のレビュー、ついでに9点の人の短いけれど良レビュー

1.  「カストラート」のビデオみた―ィ!誰か貸して~だって途中からテレビで見たから最初が知りたくて~familia-importante@ezweb.ne.jpに情報頂戴【棘】さん 10点

2.  声に感動した。合成の声でも感動した!最高!本物のカストラートの声が生で聴きたい!あの時代にいきたいです。久しぶりに感動しました。カルロも素敵な青年でよかったです【タカ】さん 10点

3.  ファリネリのソプラノ、合成であるものの完璧に口パクが音とあってるためとても自然でした。映画としては7点ぐらいだけれど、歌のシーン1つ見ただけで10点です。【エーテル】さん [DVD(字幕)] 10点

4.  素晴らしい。こんなに面白いのに知名度が低いのが残念。芸術のためなら人はこんなこともできてしまうのね。あの時代だからこそここまで芸術にのめりこめるんだとは思いますが。できるだけ多くの人に観てもらいたいですね。【たーふじ】さん 9点

 

最低点は5点です。結構評価が高いですが低めの点数は好き好きからか… 3人分全部載せておきます。

1. 作品における「嘘」は1つぐらいまでならいいのかもしれない…

この作品は、
・現代の人間が18世紀の人間を演じるということ
・普通の男性が、去勢によって第二次性徴による変化を経ていない男性を演じること
・口を動かす俳優と実際に聞こえてくる歌を歌う人は別であるということ
という、思いつくだけでも上記の「嘘」があり、それ故に嘘くさく生理的に受け付けない作品となってしまっていた。

多分見たのは2回目、1回目は印象に残らず(なので、見た気がするけどもう1回見るか…となり)2回目は嘘くささが気になった。

リアリティを重視しない人なら楽しめるのかなー…お金はかかっていると思うので。
【Sugarbetter】さん [CS・衛星(字幕)] 5点

2.  あの声にはアタイもぶっ倒れそうですよぉ!【もりしげひさや】さん 5点

3.  歌のシーンがちょっとあきて早送りした。何となく見た後怖くなってしまって、後味悪かった。【たまお】さん 5点

 

 

【映画ルーム(142) スラムドッグ&ミリオネア 〜  6点】

【かわまりの映画ルーム(142) スラムドッグ&ミリオネア 〜  インド風味付けはNGでしょ! 6点】 平均点:7.14 / 10点(Review 237人)  2008年【英・米】 上映時間:120分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=16647

 

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【あらすじ】

なぜ、無学のスラム出の青年がミリオネーアで次々と正解していくのか?その過酷な人生こそが彼に知識を与えていました。ムンバイに生まれ、唯一の母が死に兄と共にたくましく生きるジャマール。同じ境遇のラティカと出会い3人で行動を共にしていたが、親切な人達だと思っていた人達が大変な悪党だった!ラティカを残し彼らはより過酷な人生へ....【としべい】さん

あらすじ執筆者のページ: https://www.jtnews.jp/cgi-bin/revper.cgi?REVPER_NO=20527

 

【かわまりのレビュー】

子役が登場する作品では点数辛め、波乱万丈の原作と違いすぎ(本作品も十分波乱万丈だと思う方もいると思いますが)、この後、高評価が続きそうなのでひねくれ根性を発揮、加えてムンバイ出身のインド人が「インド映画なんて、美男と美女と悪漢が必ず登場して、すったもんだの結末が最初から見え透いている作品ばかりだ・・・。」と言ったその雛形どおりの作品なので点数は超辛です。インド映画ではオースティンの「Pride and Prejudice(高慢と偏見)」をもじった「Bride and Prejudice(花嫁と偏見)」という、アメリカの映画評で少しだけ取り上げられたミュージカルがきれいで楽しかった記憶がありますが、アカデミー賞を総なめにしたこの衝撃は一体何なのか・・・。やはり、スラムの汚さとクイズ番組の華やかさを組み合わせたアイデアのせいでしょうか。確かに雛形どおりでも原作と異なってもカタルシスを与えてくれればいいのですが・・・。原作では主人公がしぶとい悪者で兄(原作では兄貴分)のサリムが俳優を目指すまじめな少年、主人公の恋人がもっとすごい職業に就いていて、アクションや発砲だけではなく病気や死、殺人や強姦(そ、そ、そうなのです)のエピソードまであったので本作品を見て少しがっかりしました。主人公がアグラのタージマハルでもぐりのガイドをした時の最初の観光客が原作では日本人だったのですが、映画では白人だったのでこれはいいことだと思いました。監督はイギリス人ですがストーリーと最後の歌と踊りはインド映画の定番、主人公を尋問する警部(原作では主人公の身の上話を聞くのは女性弁護士)が王貞治監督を黒くしたような哲学的な顔立ちをしていたので「ガンジー」をもう一度見たくなりました。ところで、原作者で外交官のヴィカス・スワラップはもうすぐ総領事として大阪に赴任するそうです。彼が「ブラック・レイン」を超える日本を舞台にしたアクション物の原作を書いてくれることと、スラムの子供たちの中からオーディションで選ばれた子役たちが立派な俳優に育つことを期待しています。

 

10 点満点の人から秀逸なコメント

1.《ネタバレ》 ・・・意外に点数低いなぁ。私は世間の絶賛とアカデミー8部門受賞という本作の権威を笠に着て、大激賞のイヤらしいレビューをしますけど・・・みなさん泣きませんでしたか?。(かわまりの口出し: 原作を読んでいるとシラけます。) 私はボロ泣きでしたよ。単純だからでしょうか?。(かわまりの口出し: その通りです。) /途中主人公が示唆するように、あの4択のクイズ番組って出題範囲などなく問題内容に出題者の恣意が許されてるので、解るわけない問題出すことなど簡単なわけで(極端なこと言えばみのもんたのプライベートな事柄出せばいい)、欺瞞に満ちたものです。最終的には出題者も左右できない「運」に結果が左右されるいいかげんなものです。安全な高みからうろたえる無知で貧乏な金目当ての解答者を小バカにする醜悪なものです。でも、それってこの世界そのものみたいじゃないですか!。だからこそ、少なからず冷酷な現実に拒絶され続ける我々はインドの視聴者たちと同様、身勝手に主人公を応援し、豊かなくせに彼に自らを重ね、世界を変えたいと願うのです。ムンバイのビル群を見下ろしながら今「世界の中心」にいるという兄のセリフは自己肥大の傲慢さから出たのかもしれませんが、あのシーンには妙な説得力とスケール感がありました。この映画には世界の核心、世界の全てが描かれているという錯覚(そんなわけないけど)を抱きました。本作は最高のエンタメであると同時に突き抜けた崇高さがあると私は勝手に思ってます。(かわまりの口出し: 主人公の兄役にあんな人相の悪い俳優を起用しておいて何言ってんの?) /前半のスラムの場面に顕著な全編に渡る疾走感と溢れる生命力は絶妙の音楽とポップな映像に支えられています。もはや風格漂う王道の派手さ、悪趣味さ、カッコ良さじゃないでしょうか?。オペラでも恥ずかしいような純愛は、当初より示される「運命」的な(作られた)全体の構成からすれば当然のこと!。所詮戯れの作り事であることを忘れさせる壮絶な展開をファンタスティックに染め上げるラスト。(かわまりの口出し: ちを分けた兄貴が死んじゃってあれはないでしょ!) その快感の余韻は極上!。(かわまりの口出し: 前出と同じ。鑑賞後、なんかこう生きる気力みたいなもんが湧いて元気が出ました。映画ってそれが最高で、それだけでもいいんじゃないですか?。自己満足でもいいです。なんか今後0点もつけられそうな映画ですけどね・・・。【しったか偽善者】さん [映画館(字幕)] 10点  (かわまりの口出し: 原作の方が100倍ええわ! わたしが読んだのは英語の原文で日本語訳には責任が持てませんが。。。)

10 点の他のレビューは次のURLをどうぞ。https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=16647

 

低得点(1点と3点)をつけた人のレビュー

1.  冒頭「なぜジャマールはクイズミリオネアで正解することができたか」という問いかけが与えられるのですが、正解は私の想像を超えた、もっともつまらない理由でした。
名作かもしれませんが、私の人生観から著しく逸脱しているので好きになれません。【Donatello】さん [DVD(字幕)] 1点

2.  《ネタバレ》 ここの評価点が高いのと、「クイズミリオネア」が絡んでる興味で、ネットの無料視聴で観てしまったが、娯楽的価値は無い映画。児童の道徳教育的主観で考えると良い部分もあるかもしれないが、いろいろな意味で汚すぎるシーンもある為、一概には、子供の為に良い映画とも言えない。エンディングのダンスには思わず苦笑い。この映画の中で、ある意味最も怖い。【爽やか林檎】さん [インターネット(字幕)] 3点

3.  《ネタバレ》 特にストーリーもなく淡々と過去の経験を基に問題を正解していくだけ【シトロエン】さん [DVD(字幕)] 3点

4.  運命だったって・・・なんですかそれ。【次郎丸三郎】さん [DVD(吹替)] 3点

5.  《ネタバレ》 うんちにドボンしてスターを追いかけるシーンで観る気を損ねた。しかも、人波かき分けてスターにたどり着き、何の難もなくサインをもらえて、完全にアホくさくなった。そのまま観るのやめたら、ここで文句の一つも吐き出せないので半ば怒り気味に鑑賞。そのうえでの感想・・・あそこまで奇跡的偶然を積み重ねてOKなら、どんな人生送ったどこの誰が10問正解したって構わないじゃないですか。あー、やっぱ結局アホくさ! 面白かったのは、トイレの鏡に『B』の文字のくだりのみ。それだけ。でも、司会者が主人公を落とそうとする理由がわからないし、主人公が司会者を信じなかった理由もわからない。いっそのこと、人を信じなかったために不正解して全てを失う話にしたら良かったのに。なーんてね。あと「お茶汲み」「お茶汲み」って軽蔑的に表現するのがウザイ。そのお茶汲みが努力と根性と英知で大成功をつかむわけじゃなくて、単に「偶然」でミリオネアに10問正解する話。人生、夢があった方がいいけれど、こんな夢は勇気や希望に繋がりませんわな。ラティカをそんなに愛して追いかける理由もわからない。彼女の内なる魅力(主人公との心の絆など)は描かれないし単なる添え物。もっと二人の心の絆を描いて、ラストは問題そっちのけでテレホンで強く気の利いたセリフやってくれたら「いい映画」と思えたかも。なんでアカデミー賞? 踊りありのエンディングは面白かったけどね。アカデミー賞って最近どうかしてると思います。映画全体が質低下してるなら「該当作なし」くらいのスタンスとればいいのに。過去に賞逃した作品がかわいそうに思えます。【だみお】さん [DVD(吹替)] 3点

6.  《ネタバレ》 なに なぜ なして? 

なにがどうなの? 
なにがウケたの? 
なしてなの? 
なにがなぜして なしてやのん? 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 3点

 

【独り言】

上の口出しでも書いている通り、わたしは本作品の原作を原書で読んでいたく感動したので本作品がアカデミー賞作品賞を受賞したことを素直に喜ぶことができました。そして直ぐに発売されて図書館で借りることができたDVDを見てまずウンチまみれのシーンで引き、血を分けた兄の役の俳優の人相の悪さに全く関心を失いました。こういうことは「カストラート」でも経験しています。まず主人公のジャマルが育てられた環境は人身売買を生業にするヤクザの巣窟ではなく(だったら英語は話せないはず)、カトリックの神父さんの家なのです。この神父さんが実は同性愛者で、ジャマルのヒンヅー教徒の生みの親は夫婦喧嘩が絶えず神父様に相談を持ちかけたところ「子供をもうけなさい。」と言われたのでその通りにしたら夫婦仲はますます悪くなったので「どうしてくれる!」と言ってジャマルを教会に置き去りにし、そのせいで主人公はジャマル(ヒンヅー名)とトーマスというイギリスの名字にイスラム教徒の主張でモハメドというイスラムのミドル名を授けられます。まあ、ジャマルの大人になるまでの人生はすでに波乱万丈なのですが、特筆すべきは警察の拷問からジャマルを救った女性弁護士とヒンヅー教徒による焼き討ちから救い出して兄弟の契りを結んだ天使のように美しい演劇気狂いの男の子との出会いでしょう。ジャマルはクイズ番組から得た賞金でこの弟分を演劇学校に通わせることになります。クイズ番組に反映される経験の中で印象が深かったのはインド駐在で「ペルソナ・ノングラータ」ということで強制帰国させられるオーストラリアの外交官の話かな? とにかく本業が外交官の筆者ならではのエピソードでした。原作はもう一度読むつもりですが映画の方はもう見るつもりはありません。

 

 

【映画ルーム(141) インドへの道 〜 東西の対立構造だけでは捉えきれない重層構造社会 2点】

【かわまりの映画ルーム(141) インドへの道 〜 東西の対立構造だけでは捉えきれない重層構造社会 2点】  平均点:6.50 / 10点(Review 26人)   1984年【英】 上映時間:163分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=42

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

英国植民地のインド。マデラ(ジュディ・デイビス)は婚約者の治安判事ロニーのもとを訪ねるが、現地英国人がインド人に距離を取り、優越感を示すのに辟易するばかり。そんなおり、マデラとムーア夫人(ペギー・アシュクロフト)は、インド人医師アジズと親しくなる。アジズの誘いでマラバー洞窟の観光に出かけたふたり。しかし現地でマデラは「アジズに暴行された」と訴え出る……。支配者と被支配者、異文化同士の摩擦と軋轢を描く。E・M・フォースターの原作をデビッド・リーンが映画化。【円盤人】あらすじ執筆者のページは下のURLです。

https://jtnews.jp/cgi-bin/revper.cgi?REVPER_NO=23527

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 いろんな映画評でいいことをたっぷりと聴かされたにした後、私流の見方でどっと評価を下げた作品です。一番気になったのはインドという複合的な社会に遭遇したイギリス人(そしてこの映画の製作者たち)がインドを一枚岩とみなしているような感じがする点です。ヒロインに親切をつくしたインド人医師がヒンヅー教徒なのかイスラム教徒なのか(名前からしイスラム教徒らしい)さえどうでもいいことみたいです。それからそのインド人医師が若いイギリス人女性のガイドを買って出るところはイギリス人に迎合する軽はずみさが気になったし、イギリス人女性が錯乱状態になったせいでつかまって留置場に入れられてからは「インド人の名誉をしょって立つ」みたいに毅然とするところが人格的に全く矛盾していると思いました。もし欧米人の映画制作者がたとえば幕末の日本を舞台とする映画を作るとして、徳川も朝廷も薩長土肥のことも何も勉強せずに日本を代表する人物として演技してほしい、なんて一流の俳優に依頼してきたら、日本の名誉のために断ってほしいです。この映画でも一流のインド人俳優が出演を断ったかも・・・なんてこれ以上書くと中傷になるかもしれないのでこのへんでやめておきます。(「ラスト・サムライ(2003年)」の製作者と渡辺謙さんに拍手。)

(なお、わたしの点数2点は最低点にしてわたしは2点をつけた唯一のレビューワーです。)

 

(わたしとよく似た意見で高得点の人のレビュー)

Drアジズはなぜああも卑屈なほどイギリス人に尽くしたのか。聖母のような雰囲気のあるモア夫人に好意を持ったというだけではなく、インド人としての見栄もあったのか。植民地であるインドに来ているにもかかわらず、インド人が嫌いと言う傲慢なイギリス人たちは当時そのままかもしれないと思う。その中でフィールディング教授が示す友情は一貫しており良心的。閉所恐怖症という婦人はともかく、こだまに怯え錯乱状態になってアジズを訴えたというアデラの精神状態はよく分からない。混沌=神秘というインドの持つ独特の風土への恐れ、異文化への理解の難しさを表しているのか、、、いくつもの「なぜ?」がまとまりなく浮かんでスッキリしない。マイペースで独特の持論を持つゴトボリ教授は存在感があったがA・ギネスだなんて全く分からなかった。
まるでインド人にしか見えない。インドの風物、彼とアジズが移り住むチベットの山々や渦巻く雲などのロケーションは雄大で素晴らしく、いかにもリーン監督らしい。これを見ただけでも大きなスクリーンで見たかったと思う。【キリコ】さん 7点

 

9点(最高点)の人のレビュー

1. なんと言ってもモーリス・ジャールの音楽がインドの壮大な景色にマッチしていて本当にすばらしい映像となっています。ストーリーうんぬんより先にインドのスケールのでかさに圧倒されて、まずインドという国に魅せられてしまいます。そしてミセス・モアとアジズの、恋愛感情とか愛情とかを越えた深い信頼関係や、ゴドボリの、未来をなにもかも見通したような不思議な言動などあとになってとても印象に残る要素がいっぱいです。とにかくインド好きになることはまちがいないです。【やすこ】さん 9点

2. 先に翻訳を読んだので、入りやすかった。本から抜け出てきたようにぴったりの配役。西洋至上主義の醜さに、ヨーロッパ嫌い/怖いになります。なぜかマラバー洞窟のシーンで眠たくなる私。それでも、何度も見直してます。【イボンヌ】さん 9点

3. 善意の人であるアジズを、妄想による架空事件で貶めたのが、インドを理解しようとしていたアデラ本人であったことが、心に重くのしかかった。アジズとは目に見えない絆によって結ばれたかに思えたミセス・モアにしても、肝心な時に逃げるようにインドを離れ、洋上で死を迎えてしまう。何よりもアジズを傷つけたのは、同国人から見捨てられたアデラに手を差し伸べた、フィールディング教授の偽善行為ではないだろうか。教授がミセス・モアの娘と結婚しようとも、アジズの心の奥の痛みは癒えることはないだろう。結局、西洋と東洋の和解は表面上のことで、思想や価値観までも分かりあうことは不可能だという結論を受け入れるしかない。過度の思い入れや執着を排し、ゴドボリが見せたような自然体で生きることの意義を、この作品から学んだ。【トバモリー】さん 9点

 

低得点(3点、4点、5点)の人のレビュー

1.東洋人としてはこういう作品をみるとツライですね。体感した方は少ないかと思いますが、欧米の東洋蔑視は皆さんが思っている以上のモノがあります。それは昔も今も変わりません。【東京50km圏道路地図】さん 3点

2.  もともとデビッド・リーンの映画は好きになれないんだけど、これを見た時は、あまりの衰退ぶりにやはり感慨を禁じ得なかったな。ヒロインの錯乱と、それによって窮地に立つ誠実なインド人の法廷劇をまがりなりにも成立させるためには、インドの風土の”何”が彼女を狂わせたのかをもっと丁重に描くべきじゃないのか。おそらく体力的にインドロケを割愛したせいか、何だか舞台の中継でも見ているかのような「色気」のなさに、リーンも終わったな…と思ったものだった。そして案の定、これが遺作となってしまった。いまさらながら、合掌。【やましんの巻】さん 4点

3.  英国統治時代のインド。インドと聞いて思い浮かぶ雑然とした熱っぽさが無くて、繊細で美しい画だった。・・でもお話はヒロインの心情含めよく分かんなかったし謎だらけだった。一生懸命思い出そうとしても蘇えるのが体位をちりばめた神殿の廃墟だけ、ってのも我ながらどうなんだ。【tottoko】さん [ビデオ(字幕)] 5点

4.  《ネタバレ》 異国情緒への表面上の憧れだけでできてしまったような作品です。インドを舞台としていながらインド人はほとんど進行に絡んでこないし、数少ない接点であるアジズ医師にしても、その描写はかなり西欧人的です。そもそも、最初の方はどうみてもアデラよりもモア夫人の方が主役みたいだし、終盤は完全にアジズ医師が主役に成り代わってしまっていて、視点の大きなブレも気になります。160分強という尺も長すぎ。【Olias】さん [DVD(字幕)] 5点

5.  英国統治時代のインド。インドと聞いて思い浮かぶ雑然とした熱っぽさが無くて、繊細で美しい画だった。・・でもお話はヒロインの心情含めよく分かんなかったし謎だらけだった。一生懸命思い出そうとしても蘇えるのが体位をちりばめた神殿の廃墟だけ、ってのも我ながらどうなんだ。【tottoko】さん [ビデオ(字幕)] 5点

 

【独り言】

主人公がエロチックなインドの彫刻を見て錯乱状態に陥ったことは確かでしょう。しかし案内役のインド人のアジズ医師に暴行されたとまで言うのはあまりじゃないかと思います。真相は伏せられているわけですが。。。 またイスラム教徒だというアジズが選んだ場所がどうやらヒンズー教の信仰拠点らしいのも訳がわかりません。偶像を厳禁するイスラム教を信仰する者がヒンズー教の神像を単に美術品として外国人に披露することがあるのか? ただ単に異文化・異教徒がわけもわからない信仰対象ということでスルーしてアラベスク模様で装飾されたイスラム教のモスクにでも案内するのが普通ではないのか。。。 考えれば考えるほどわけがわかりません。

 

【映画ルーム(140) 眺めのいい部屋 〜 新旧の鬩(せめ)ぎ合いというダイナミズム 7点】

【かわまりの映画ルーム(140) 眺めのいい部屋 〜 新旧の鬩(せめ)ぎ合いというダイナミズム 7点】 平均点:7.19 / 10点(Review 67人)  1986年【英】 上映時間:114分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=237

 

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【かわまりのレビュー】

この作品についての事前知識は、身分違いの恋愛を題材としている非常に美しい画面とBGMの作品だということでした。そして多くの方がやはり美しいメロドラマと理解していらっしゃるようですが、わたしは一見して「本当にそうなのかな・・・」と感じました。「身分違いの恋」として私がイメージしていたのは大概は破綻するのがオチの、深窓の令嬢が慣れない掃除や炊事・洗濯にいそしむ光景なのですが、ここで身分が下とされているジョージ・エマソンはイタリアだギリシアだと遊びまわれる身分で決して貧乏人ではなく、おそらくセシルよりも裕福な新興ブルジョアのようです。そして馬車と車の両方が使われている時代背景・・・。さらに想像するなら、経緯はまったく触れられず、いきなり婚約者となったセシルの人柄ではなく血統にルーシーは惚れていたようです。19世紀後半のビクトリア朝、イギリスが世界の工場にのしあがったこの時代、血統書つきの貴族は荘園を小作人に耕させて馬車で領内を見回るだけで優雅に暮らし、工場を経営して自動車を乗りまわす新興ブルジョアたちに「狭い英国、そんなに急いでどこに行く。」と軽蔑的な視線を浴びせていたようですが、ブルジョアたちは議会下院に選出され、イギリスを動かす政治権力も手中にしました。さらに、イギリスの歴史そのものがフランス出身のノルマンディー公がイングランドの王朝を創始したり、貧民出身のウェリントンがナポレオンを破って公爵になったりと、常に激動とは無縁ではありませんでした。ルーシーが巻頭で演奏するピアノ曲はエネルギーと躍動を体現したようなベートーベンのソナタ「ワルトシュタイン」、一方のセシルが好きなのはひ弱なロマンチストのシュ-ベルトの曲で、ジョージと仲のいいルーシーの弟の低俗な(?)ピアノの弾き語りにセシルが逃げ出すシーンも象徴的です。

 

10 点の人のレビュー

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=237

(かわまりの独り言) わたしが危惧(?)したロマンチックなシーンにメロメロといった感想ばかりで悪いけれど秀逸なレビューとわたしが評価できるものはありません。でもロマンチシズムを楽しむこともできるということで参考にしてください。

 

8点(最頻出点)の人のレビュー

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=237

(かわまりの独り言) 10 点満点のグループの方と異なる特徴は出演の俳優さんのキャラに言及していることです。でも登場人物の階級に言及している方は一人しかいらっしゃいません。ただし「中流階級のお話」というのは主人公のルーシーが結婚を決めた相手のジョージ・エマソン以外はハズレです。

 

お隣さん(わたしの前に投稿した人)のコメント

《ネタバレ》 眺めのいい部屋=満たされた人生、はあそうですか。良かったですね。
というような気の抜けたコメントしか残らないけどこんなことでいいのか。
もしかすると、もしかすると、もっと深いウラがあってしかるべきなんじゃないのか。
ルーシーは人生最大の失敗をしたのかもしれず、ああ~セシルと結婚しとけば良かったのにねえ、この5年後には可哀相な彼女は…てな噂話の途中で話が終わったようなこととかさ。
それでも一時「満たされれば」よくて、それが人生のヨロコビなのじゃ、ということを言いたいのでしょうか。イギリスの話なのに?
かわいそうなシャーロットと、もっとかわいそうなセシルは、所詮誰かの「脇役」として生きればいいじゃん、というような扱いなんですけど、そんなんズルいんじゃないでしょうか。
やっぱここで話が終わるのは脳天気に過ぎるよなあ。
セシルいいじゃないですか。もともとすっごく好きな相手じゃなければ、情熱が冷めたとき相手にうんざりするということが無くてすみます。それに彼のほうは誠実でルーシーのことを好きなわけですし。理想的な結婚相手だと思うけどなあ。だってどんな相手と結婚したって数年後には、夫婦の会話の大半は事務連絡とか事務折衝になるわけですから、なまじ情熱的になった相手となら、うんざりする度合いもUPします。生活はルーティンですが、情熱は違います。
そして、どうも作り手はあんまり主役二人に感情移入しているようには思われません。私の想像では、弟のフレディに自分を模しているのではないでしょうか。フレディばっかりいいとこどりされている気がします。
ところで私の頭の中ではヘレナ・ボナム=カーターといえば猿、というヒドいことになっているので、いくらなんでもイギリス文芸作品に出たのなら(そして猿顔だったとしても)そのあと猿を演じるべきではありませんでした。役は選ばなくては。【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 5点

 

【独り言】

ヘレナ・ボナム=カーターはわたしが好きな女優さんです。特に若い頃の童顔に隠された知性と意志が魅力的です。中年以降は少しカドが取れたかな? でも「ビッグ・フィッシュ」の魔女役で見る限り美しさだけは健全です。それから今回のアップの時に初めて主人公ルーシーの元の婚約者セシルを演じているのがリンカーンアカデミー賞主演男優賞を受賞したダニエル・デイ・ルイスだと知って「さすが名優って何にでも化けられるのね。」と思った次第です。この作品と「インドへの道」で結婚を控えた若い女性の心の揺らぎを通じて社会を描いた原作者ですが「インドへの道」の女主人公とは異なり、本作品でヘレナが演じるルーシーは自分に対してあくまでも正直で意志を貫きます。ルーシーはセシルと結婚した方が良かったという意見がありますが、果たしてイギリス人は同じ評価をするでしょうか? 特にセシル擁護の根拠がセシルの方が生活が安定しているからだとか裕福だとかだったらそれは前提が全く間違っていると思うのです。イギリスではジェーン・オースティンが執筆していたナポレオン時代から新興地主階級が台頭し、金を使って下院議員に当選して国政に参加する者から領地の生産性を上げたり領民の福利厚生に尽くして騎士階級に列せられてSirの称号を許される者も現れました。一方では十一世紀のノルマン征服以来の貴族階級であってもうかうかしていると社会経済の変化についていけず、領地や屋敷を切り売りしながら没落していったのです。十九世紀後半に長期にわたってイギリスに滞在しながらこのダイナミズムを理解せず、資本家による労働者と労働力の搾取が固定的なものだと思い込んだマルクスが代わりの社会の形を提示することもなく固定化した社会関係を破壊することを提唱したのが資本が未成熟な国々が採用した共産主義なのです。

【映画ルーム(139) 戦場でワルツを 〜 生と死の境界線をなぞる 6点】

【かわまりの映画ルーム(139) 戦場でワルツを 〜 生と死の境界線をなぞる 6点】 平均点:6.42 / 10点(Review 26人)  2008年【イスラエル・仏・独】 上映時間:90分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=17126

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

悪夢に悩む親友からの相談を契機に、自らも謎の夢と記憶の消失を体験していること再認識したイスラエル人映画監督。彼はカウンセラーなどのアドバイスを受けながら、失われた記憶を取り戻すべく戦友たちを訪ね歩く。そして、少しずつ恐ろしい記憶を取り戻していった彼は、ついには畏れていた真実に辿り着く。監督自身の体験を元に、独特のアニメ表現で戦争の狂気が語られていく。【ぽこた】さん

あらすじ執筆者のページ

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/revper.cgi?REVPER_NO=24382

 

【かわまりのレビュー】

この作品は邦画の「おくりびと」とオスカー外国語部門賞を争い、前評判では「おくりびと」よりも評価が高かったそうです。イスラエル人がやっているらしい英語版の吹き替えの訛りがきつくて、アメリカ人の声優さんが起用されていたらもっとよくわかったかもしれないのですが、もう一度字幕をオンにして見直す気はあまりしません。全体に流れる悲痛な雰囲気に耐えるのはもうゴメンというのが本音です。パレスチナの問題はわたしたち日本人の想像を絶するものがあると思いますが、そもそもイスラエル人であろうがどこの国民であろうが、自分の手で人を殺すのはどんな場合でも(殺す相手が死刑囚で仕事で殺さなければならないとしても)いい気分ではありません。それを代わってやってくれそうな強硬派の現職のネタニヤフを、20年前には同じような誰かを首相に選び、当のネタニヤフや20年前の誰かは自分で戦場に行って殺人に手を染めるわけでもなく、本作品の登場人物のようにレバノンなどに送られたイスラエル兵が公務として人を殺し、自分の心にも傷を負う・・・という構図、どこかおかしくありませんか?だからそのおかしな構図の一部を拡大して描いたこの作品よりも平和な社会での生と死を見つめた「おくりびと」のほうが上を行っている、とわたしは本気で思います。でも、深層心理をたたえた大人の表情やしぐさの細部や抑えた色調は特にビジュアル系の人からの高い評価を受けるでしょうし、ストーリー、美術とともに完成度は非常に高く、一見に値する作品ではあります。

 

10 点と9点の人のレビュー

1. 《ネタバレ》 夜のシーンがいい。色のない世界をこれほどリアルに表現した絵やアニメは初めて見たような気がする。日本のアニメとは、やっぱり動きが違う。技術的なことには無知なのですが、妙なところにリアリティを追及して、逆にアニメ的に見えたりして、アニメ的に大胆なデフォルメをしてしまう日本人とは表現に対する感覚が違うのかなあ、とか思ったりしたのだがどうなんだろう。イスラエル版「地獄の黙示録」といったところだが、まさにイスラエル自体の状況が万年ベトナム的。もう何もかもが狂ってます。絵も、戦争も、人間も、音楽も、ファランヘ党も、イスラエルも、監督も。兵士がライフルでエアギター始めて、そのまま戦闘のダイジェストに突入。機関銃乱射しながらワルツを踊る。「戦車の中だと安心だった」。やっぱり戦場というのは感覚が麻痺してしまうのが怖いんですね。敵性国家に包囲されたシオニズム自体が、まさしくそういう状態。イスラエル映画界からこのような作品が生まれたというのは大変意義深いことだと思います。失われた記憶で引っ張っておいて、オチが「僕はそこにいた」だけでは物足りないような気もしますが、基本ドキュメンタリーだから仕方ないのでしょう。最後の実写は記憶を取り戻したという解釈でいいのかな?イスラエルが、あるいは世界が意識的記憶喪失になっているというメタファーのようにも思える。西岸では今も「入植」が続いているわけだが、その事実を知っている人はどのくらいいるのだろうか。【わいえす】さん [映画館(字幕)] 10点

2. 《ネタバレ》  非常に衝撃的な作品でした。アニメーションが内容のショッキングな部分をやわらげてくれはするものの、現実に登場人物たちが体験したことであるという事実にはやはり恐怖を感じてしまいました。

 当事者の目から戦争というものの姿をありのままに描いたこの作品は本当に多くの人に見てもらいたいですね。

 音楽(OMD「Enola Gay」やPIL「This Is Not a Love Song 」そしてバッハ等)の使い方もよかったです。【TM】さん [映画館(字幕)] 9点

3. ドキュメントと現代ならではの映像表現の融合は、ある意味とても新鮮でした。
アニメとはいえ、描かれている内容は至極リアルで、悲惨な情景を上手く見る側に想像させることで最後まで見せさせるチカラは単純に凄いと思った。子ども騙しではないからこそ、こういう伝え方もあるのだとも感じた。【sirou92】さん [DVD(字幕)] 9点

4. 《ネタバレ》 アニメーションの可能性を広げた画期的な傑作、と言っても過言では無いかと思います。恐ろしくも、素晴らしい。
まず恐ろしいのは、作中で語られるレバノン紛争に関するインタビューにおいて、証言者たちの戦争に参加している“動機”がスッポリと抜け落ちていること。少なくとも劇中では「何故彼らは戦争に参加していたのか?」は語られない。大義なき闘争・戦争、これは怖い。それは主人公も同様です。するとどうなるかというと、主人公はその記憶を失う。証言者たちは淡々と記憶を語るが、その様子はまるで劇中でPTSDの心理学者が語る「カメラのレンズごしに見ている」状況に他ならない。彼らは現実に触れていないのです。
さて、現実に触れていないのは観客も同じです。たとえどんなに臨場感に溢れた戦争映画『プライベート・ライアン』だろうが、『ブラックホーク・ダウン』だろうが、『プラトーン』だろうが、我々はレンズ越しにその戦場を傍観している意識をどこかで持っている。しかしアニメーションというのは不思議なもので、実写ではないアニメという手法で語られることで格段にその戦場の風景は現実味を帯びる様になる。少なくとも私はそう感じました。イメージとしてはノンフィクション・ノベルを読む時に実際の映像を想像してしまう感覚に近いかと思います。
ただ、そうは言ってもアニメーションもレンズ越しに創造した映像であることに変わりはない。……が、最後にアニメーションの映像と実際の映像がオーバーラップする。サブラ・シャティーラの虐殺によって、居場所を失い廃墟の前で泣き叫ぶ女性、道端に山の様に積まれ転がっている死体の数々、そして頭部と手だけ瓦礫から覗かせている少女の遺体。そこで唐突に映画は終わる。正に観客は最後に現実に触れてしまった。これは地獄だ。
普通はFLASHアニメーションというと、最早時代に逆行した手法の様に感じますが、本作の様に淡々と戦場の様子を語ることが必須の作品においては実に効果的であると思いました。【民朗】さん [DVD(字幕)] 9点

 

最低点(3点、1人)の人のレビュー

戦争を描いた映画や小説の評において、「戦争の狂気」なんて言葉は、もはや常套句で、自分自身も何度も使ってきたように思う。
だが、実際問題、自分を含め多くの人々は、その言葉の意味をどれほど理解出来ているのだろうか。甚だ疑問だ。

パレスチナ問題」は、ほとんどすべての日本人にとって、“対岸の火事”である。
重要なことは、先ずその自分たちの認識の低さを認めることだと思う。知ったかぶりでは、何も生まれない。

そういう「無知」な状態で観た映画であり、そうである以上、その視点からの映画の感想を述べるべきだと思った。

感じたことは、あの遠い国で繰り広げられ、今尚くすぶり続ける戦争において、人々の心を蝕むものは、もはや「狂気」などではないように感じた。
長い歴史の中で、繰り返される憎しみの螺旋、それを断ち切れない人間そのものの「業」だと思う。

だから、敢えて言わせてもらうならば、映画の主人公が抱えていた”心の傷”に対して、今更何を言ってるんだというような不自然さを拭えなかった。
問題は今この瞬間も決して解決していなくて、血を血で洗っている。そんな中で、この映画の表現は、本質的に非常に浅いように感じてならない。

特徴的なアニメーションは、映像表現としては素晴らしかったと思う。
ただし、最終的に「実状」を現実的な映像で見せてしまうのは、メッセージ性は別として、表現方法としてフェアではないと思った。【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 3点

 

興味深いレビュー

1. 
2. 《ネタバレ》 ラストの実写がどうにも納得出来ないです。曖昧な記憶部分をアニメで、完璧に取り戻したクリアな記憶は実写で、という住み分けなのかもしれませんが、アニメとしての表現が出色のものと思えるだけに、最後を実写に頼った(?)ことが只管残念。なので6点献上に留めます。
ただ、ここで語られている体験は非常に説得力あるものと感じます。ストーリーと展開は決して斬新ではありませんが、アニメならではの表現力で力強く訴えてきます。
この戦争体験の語り口、狂気の捉え方は、評価の分かれるところでしょう。そもそも戦争への考え方自体、十人十色、千差万別。万人に受け入れられる主張などあり得ません。だから、主張そのものよりもテーマとして評価するのが妥当なのかもしれないです。
そんな訳で、「戦場でワルツを」踊る心理がどうこうと言うよりも、「戦場でワルツを」踊ってしまう現実が悲しいと思いました。【ぽこた】さん [DVD(字幕)] 6点

 

【映画ルーム(138) 愛の勝利 〜 改めて生きるということ 9点】

【かわまりの映画ルーム(138) 愛の勝利 〜  改めて生きるということ 9点】 平均点:n.a. / 10点(Review 1人)   1939年【米】 上映時間:106分
クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=10344

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

父の遺産で暮らす若い女性ジュディーは乗馬や狩猟、観劇などに興じる誰から見ても健康的なお嬢さんだったが、時折激しい頭痛に襲われ、落馬などの事故が相次いだため、周囲の勧めでスティール医師の診察を受ける。スティール医師は簡単な診察でジュディーが脳腫瘍に冒されていることを見抜いて外科手術を勧める。ジュディーは頼りがいのあるスティール医師に、スティール医師は生き生きとしたジュディーに互いに惹かれ合うが、スティール医師はジュディーの手術を自ら手がけたために彼女の余命がいくばくもないという事実を知ってしまう。

 

【かわまりのレビュー】

難病ものの元祖として鑑賞の価値がある作品。期待したよりずっとよかったと感じたのは、これ以降に作られた難病ものの作品が焦点を絞りきれていないせいかもしれません。少なくともスーザン・サランドンジュリア・ロバーツというダブル大物女優を起用しながら難病を調味料程度にしか扱わずに何が焦点なのかわからないような某作品と比べて、「余命が限定された時には人は何をすべきなのか」、ひいては「生きるということは何なのか」ということについて真剣に考えさせるはるかに優れた内容です。スティール医師がどう見ても40台半ば以上で、「キャリアもあるのにこの歳で独身??」と思ってしまうのが珠に瑕ですが、患者の予後を知り尽くしている医師が患者に対して愛情を抱くという単純なストーリーがごく自然に描かれていて好感が持てました。医者としての職業的な勝利とはもちろん患者を完治させることなのですが、高度技術による診察が可能になって外科療法が進んだ現代でも、手術や診察の結果などはそれとして、患者の人格に惹かれる医師がいてもおかしくはないでしょうね。 昨今はやりの医療物ドラマを多数見たわけではありませんが、医療従事者は最先端の医療技術を駆使するスーパーマン、病気そのものが悪の権化か退治されなければならない怪獣のように描かれているだけで患者の人格が無視されているような気がして敬遠しています。