かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(144) ドンファン 〜 伝説的プレイボーイの戯画 7点】

【かわまりの映画ルーム(144) ドンファン 〜 伝説的プレイボーイの戯画 7点】 平均点:6.72 / 10点(Review 57人)   1995年【米】 上映時間:97分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=236

 

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【あらすじ】

モーツアルトのオペラに描かれているような悪辣なプレイボーイか、はたまた英国詩人バイロン卿が描いたような全ての女性を魅了する瑞々しい好青年か・・・。芸達者なジョニー・デップが演じる現代のドン・ファンはメキシコから流れてきたという精神異常者。往年の色男マーロン・ブランドが扮する精神科医は自殺未遂で保護下に置かれたドン・ファン(ジョニー・デ・マルコ)を治療しようとし、逆にドン・ファンの目眩めく妄想の世界に引き込まれていく。クラシックからラテンまでのBGMに彩られたラブ・コメディー。

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 自分で「あらすじ」に書いた質問に自分で答えるなら、本作品のドン・ファンモーツアルト版とバイロン版のドン・ファンを足して二で割ったような人物です。十分に瑞々しくて魅力的だけれど「女は愛され、触られることを欲している楽器のようなもの。」なんて悟ったような口もきいています。英国詩人バイロン卿の原作を読んでいるともっと笑えるかもしれません。(ただし、島の乙女とトルコの後宮の逸話の順番が逆ですが・・・。)しかし、現代版ドン・ファンが妄想癖があるただの兄ちゃんというのは少し寂しいです。最後、太ったマーロン・ブランドが「彼の精神異常は伝染性・・・。」と言いながら浜辺で踊るシーンが唯一の救いでしょうか。

 

ご近所(わたしの前と前の前)の人のレビュー

1. 《ネタバレ》 美しい妄想だとばっかり思っていたら、話が現実離れすればするほど、それが現実だという傍証が出てきて、物語自体がファンタジックになってくる、という、凝った仕掛けの話である。
ファンタジックなのはいいけど、マーロン・ブランドの巨体は、往年の彼を知っている人間にとっては、ほとんど悪夢の域だな。最初は、これって特殊メイク?と目をこらして見たが、どうも本物だったらしい。着ぐるみのような体つきに、若い頃と変わらぬ青灰色の瞳が、なんともミスマッチで、なかなか不気味だった。
フェイ・ダナウェイが、けっこう愛嬌のあるもうけ役。
デップ様は、彼独特のうさんくささとロマンチックさが、見事にはまっていた。最後に、正気に戻ったと判事を納得させるシーンでは、いままでのスペインなまりがウソのようにふつうの英語になっていて、笑えた。
身近にいた青い鳥をつかまえるには、ここまでややこしい妄想が必要なのだと思うと、そんなに気楽には笑えないのだが。【yhlee】さん [DVD(字幕)] 8点

2.  つじつまの合わない話が、すごくよかった。これ観たあとはなんか幸せ。【のまっと】さん [DVD(字幕)] 8点

 

10 点と9点の人のレビュー
1.  I am Don Juan DeMarcoだけでしびれてしまいました・・・。【ファンファン】さん 10点

2.  これを10点っていうのは、私はジョニーデップにいかれてるんだろうか。(自覚はないが夫にジョニーデップファンと言われている。実際彼の映画はほとんど見ている) でも、ジョニー演じるドンファンでなく、マーロン・ブランドに感情移入した。私も、子供達のお母さんでなくて、夫ともっと恋を楽しもうと思った。人生楽しもうと思わせてくれる映画。私の人生観を変えてくれたことを感謝して10点。マーロン・ブランドが特殊メイクかというくらいデブだったけど、本当はどうなのかな。デブさがちょっと気持ち悪かった。それなのに感情移入できたから素晴らしい映画だったと思いますよ。
【kithy】さん 10点

3.  この際ストーリーなんてもうどーでもいいんです。「一生貴方についていく!!」と決意した人間がここに1人いるだけでこの1本は成功作なんです。子坊脳になったって構いません。お願いだから名前の安売りはほどほどにしてください。貴方にふさわしいのはB級映画なんです。【denny-jo】さん 10点

4.  たぶん映画を作る側や観賞する側も少なからず何らかのロマンスを見せたり見出したりするために映画を作ったり観賞したりするのだと思う。そういう意味でラストの「ロマンス病」という言葉がこの作品をすっきりと爽やかに語り、作る側、観賞する側にロマンスを見出させてくれた。映像(演技)で無言の言葉を語る作品もあるが、この作品は「ロマンス病」という一つの言葉のために映像があったんだなって改めて思った。【ゆきむら】さん 9点(

5.  かなりよかったです。愛を極めてるドンファンさんにマジ憧れます。けっこうファンタジー系好きなんでおもしろかったです。あんなおばあちゃんいたらいいなぁとか思いました。ロマンス病にかかりまくりでした。。。【バカ王子】さん 9点

6.  たぶん映画を作る側や観賞する側も少なからず何らかのロマンスを見せたり見出したりするために映画を作ったり観賞したりするのだと思う。そういう意味でラストの「ロマンス病」という言葉がこの作品をすっきりと爽やかに語り、作る側、観賞する側にロマンスを見出させてくれた。映像(演技)で無言の言葉を語る作品もあるが、この作品は「ロマンス病」という一つの言葉のために映像があったんだなって改めて思った。【ゆきむら】さん 9点

 

低い点数(1点、3点、4点)の人のレビュー

1.  何が面白いのか分からないまま終わってしまった。【もいみ】さん 1点

2.  1回目観て、面白さが分からず再び観た。結果。全く面白くない。正直皆さん勝手にロマンス病にかかっていろよと言いたい。だって、、、久しくときめきが無いのよ!!!なんかみんなラブラブでムカつくわ~~~(T_T)【おっちょ】さん [DVD(字幕)] 1点

3.  この映画の主題歌になったBアダムスの曲が大ヒットし、大好きだったのでこの映画を見たのですが(ジョニー・デップへの期待もあり)、期待が大きすぎたかな?スペイン女性は美しくてよかったけど。 【ぐり】さん 3点

4.  ドンファンはいいやつだけど、正直つまんなかった。フェイ・ダナウェイマーロン・ブランド凄いけどね、いろんな意味で。【kaneko】さん 4点

 

【独り言】

この次に紹介することになる詩人のバイロンパーシー・ビッシュ・シェリーに「フランケンシュタイン」で名前を残したメアリー・シェリーらを描いたスイスを舞台とした作品では文学を志す3人のチーム・リーダーたるバイロンは深刻な精神的危機に直面していました。この頃のバイロンの作品はわりと直裁に自分の感情を吐露したものがほとんどですが、ゲーテにも影響を与えた神秘的で難解な劇詩の「マンフレッド」についで当時の政治状況(ナポレオン失脚後の新秩序、実際には反動体制の構築)を受けて「マンフレッド」の精神性にドロドロした権力闘争などを加味した非常に難解な劇詩を次々と発表していくことになるのです。その中にあって絶筆になった「ドンファン」は簡単に言ってしまえばラブコメで、バイロンの作品をそのうち全部読んで理解してやろうと英文科出身でもないのに大それた目標を持っているわたくしめにとってはほっと一息つける作品なのです。あらすじもほんわか、高得点をつけた方のコメントもロマンス病をアピールするほんわか系が多いことからもわかっていただけるでしょう。ただ、それでもバイロン卿の執筆意図は当時の国際政治の状況と無関係ではないのです。当時、ワーテルローでイギリスのウェリントンに敗れたセントヘレナ島に流されたナポレオンの断罪が進められていましたが、それ以前にナポレオンを大将に掲げるフランスはトラファルガーの海戦でネルソン提督率いるイギリス海軍に敗れて海洋での派遣をイギリスに譲っていました。バイロンはネルソン提督はそこそこ尊敬していたようですが、スコットランド出身のウェリントンは嫌っていて陸の派遣はナポレオンが獲得するべきだったというようなことまで語っています。画家のゴヤの作品にも描かれたようなスペイン市民のナポレオンに対する激しい抵抗を直接見聞した後でさえそうでした。そして、イタリアそこよなく愛したナポレオンの失脚後にナポレオンを支持し、ナポレオンのコルシカ島脱出後に百日天下の軍事力の母体となったイタリア都市国家の凋落を目の当たりにしたバイロンは。。。「英雄なんてこんなもんさ」といった高踏的な姿勢が読者をほっとさせる、バイロンの「ドンファン」はそういった作品です。わたしの点数7点は少し辛めですが、マーロン・ブランド扮する精神科医の「彼のロマンス病は伝染性」と言いながらフェイ・ダナウェイとのっしのっしと踊る様も充分高踏的で、小難しい作品背景を知ってしまったので点数辛めですが9点か9点でもよかったかもしれないと思っています。