かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(141) インドへの道 〜 東西の対立構造だけでは捉えきれない重層構造社会 2点】

【かわまりの映画ルーム(141) インドへの道 〜 東西の対立構造だけでは捉えきれない重層構造社会 2点】  平均点:6.50 / 10点(Review 26人)   1984年【英】 上映時間:163分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=42

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

英国植民地のインド。マデラ(ジュディ・デイビス)は婚約者の治安判事ロニーのもとを訪ねるが、現地英国人がインド人に距離を取り、優越感を示すのに辟易するばかり。そんなおり、マデラとムーア夫人(ペギー・アシュクロフト)は、インド人医師アジズと親しくなる。アジズの誘いでマラバー洞窟の観光に出かけたふたり。しかし現地でマデラは「アジズに暴行された」と訴え出る……。支配者と被支配者、異文化同士の摩擦と軋轢を描く。E・M・フォースターの原作をデビッド・リーンが映画化。【円盤人】あらすじ執筆者のページは下のURLです。

https://jtnews.jp/cgi-bin/revper.cgi?REVPER_NO=23527

 

【かわまりのレビュー】

《ネタバレ》 いろんな映画評でいいことをたっぷりと聴かされたにした後、私流の見方でどっと評価を下げた作品です。一番気になったのはインドという複合的な社会に遭遇したイギリス人(そしてこの映画の製作者たち)がインドを一枚岩とみなしているような感じがする点です。ヒロインに親切をつくしたインド人医師がヒンヅー教徒なのかイスラム教徒なのか(名前からしイスラム教徒らしい)さえどうでもいいことみたいです。それからそのインド人医師が若いイギリス人女性のガイドを買って出るところはイギリス人に迎合する軽はずみさが気になったし、イギリス人女性が錯乱状態になったせいでつかまって留置場に入れられてからは「インド人の名誉をしょって立つ」みたいに毅然とするところが人格的に全く矛盾していると思いました。もし欧米人の映画制作者がたとえば幕末の日本を舞台とする映画を作るとして、徳川も朝廷も薩長土肥のことも何も勉強せずに日本を代表する人物として演技してほしい、なんて一流の俳優に依頼してきたら、日本の名誉のために断ってほしいです。この映画でも一流のインド人俳優が出演を断ったかも・・・なんてこれ以上書くと中傷になるかもしれないのでこのへんでやめておきます。(「ラスト・サムライ(2003年)」の製作者と渡辺謙さんに拍手。)

(なお、わたしの点数2点は最低点にしてわたしは2点をつけた唯一のレビューワーです。)

 

(わたしとよく似た意見で高得点の人のレビュー)

Drアジズはなぜああも卑屈なほどイギリス人に尽くしたのか。聖母のような雰囲気のあるモア夫人に好意を持ったというだけではなく、インド人としての見栄もあったのか。植民地であるインドに来ているにもかかわらず、インド人が嫌いと言う傲慢なイギリス人たちは当時そのままかもしれないと思う。その中でフィールディング教授が示す友情は一貫しており良心的。閉所恐怖症という婦人はともかく、こだまに怯え錯乱状態になってアジズを訴えたというアデラの精神状態はよく分からない。混沌=神秘というインドの持つ独特の風土への恐れ、異文化への理解の難しさを表しているのか、、、いくつもの「なぜ?」がまとまりなく浮かんでスッキリしない。マイペースで独特の持論を持つゴトボリ教授は存在感があったがA・ギネスだなんて全く分からなかった。
まるでインド人にしか見えない。インドの風物、彼とアジズが移り住むチベットの山々や渦巻く雲などのロケーションは雄大で素晴らしく、いかにもリーン監督らしい。これを見ただけでも大きなスクリーンで見たかったと思う。【キリコ】さん 7点

 

9点(最高点)の人のレビュー

1. なんと言ってもモーリス・ジャールの音楽がインドの壮大な景色にマッチしていて本当にすばらしい映像となっています。ストーリーうんぬんより先にインドのスケールのでかさに圧倒されて、まずインドという国に魅せられてしまいます。そしてミセス・モアとアジズの、恋愛感情とか愛情とかを越えた深い信頼関係や、ゴドボリの、未来をなにもかも見通したような不思議な言動などあとになってとても印象に残る要素がいっぱいです。とにかくインド好きになることはまちがいないです。【やすこ】さん 9点

2. 先に翻訳を読んだので、入りやすかった。本から抜け出てきたようにぴったりの配役。西洋至上主義の醜さに、ヨーロッパ嫌い/怖いになります。なぜかマラバー洞窟のシーンで眠たくなる私。それでも、何度も見直してます。【イボンヌ】さん 9点

3. 善意の人であるアジズを、妄想による架空事件で貶めたのが、インドを理解しようとしていたアデラ本人であったことが、心に重くのしかかった。アジズとは目に見えない絆によって結ばれたかに思えたミセス・モアにしても、肝心な時に逃げるようにインドを離れ、洋上で死を迎えてしまう。何よりもアジズを傷つけたのは、同国人から見捨てられたアデラに手を差し伸べた、フィールディング教授の偽善行為ではないだろうか。教授がミセス・モアの娘と結婚しようとも、アジズの心の奥の痛みは癒えることはないだろう。結局、西洋と東洋の和解は表面上のことで、思想や価値観までも分かりあうことは不可能だという結論を受け入れるしかない。過度の思い入れや執着を排し、ゴドボリが見せたような自然体で生きることの意義を、この作品から学んだ。【トバモリー】さん 9点

 

低得点(3点、4点、5点)の人のレビュー

1.東洋人としてはこういう作品をみるとツライですね。体感した方は少ないかと思いますが、欧米の東洋蔑視は皆さんが思っている以上のモノがあります。それは昔も今も変わりません。【東京50km圏道路地図】さん 3点

2.  もともとデビッド・リーンの映画は好きになれないんだけど、これを見た時は、あまりの衰退ぶりにやはり感慨を禁じ得なかったな。ヒロインの錯乱と、それによって窮地に立つ誠実なインド人の法廷劇をまがりなりにも成立させるためには、インドの風土の”何”が彼女を狂わせたのかをもっと丁重に描くべきじゃないのか。おそらく体力的にインドロケを割愛したせいか、何だか舞台の中継でも見ているかのような「色気」のなさに、リーンも終わったな…と思ったものだった。そして案の定、これが遺作となってしまった。いまさらながら、合掌。【やましんの巻】さん 4点

3.  英国統治時代のインド。インドと聞いて思い浮かぶ雑然とした熱っぽさが無くて、繊細で美しい画だった。・・でもお話はヒロインの心情含めよく分かんなかったし謎だらけだった。一生懸命思い出そうとしても蘇えるのが体位をちりばめた神殿の廃墟だけ、ってのも我ながらどうなんだ。【tottoko】さん [ビデオ(字幕)] 5点

4.  《ネタバレ》 異国情緒への表面上の憧れだけでできてしまったような作品です。インドを舞台としていながらインド人はほとんど進行に絡んでこないし、数少ない接点であるアジズ医師にしても、その描写はかなり西欧人的です。そもそも、最初の方はどうみてもアデラよりもモア夫人の方が主役みたいだし、終盤は完全にアジズ医師が主役に成り代わってしまっていて、視点の大きなブレも気になります。160分強という尺も長すぎ。【Olias】さん [DVD(字幕)] 5点

5.  英国統治時代のインド。インドと聞いて思い浮かぶ雑然とした熱っぽさが無くて、繊細で美しい画だった。・・でもお話はヒロインの心情含めよく分かんなかったし謎だらけだった。一生懸命思い出そうとしても蘇えるのが体位をちりばめた神殿の廃墟だけ、ってのも我ながらどうなんだ。【tottoko】さん [ビデオ(字幕)] 5点

 

【独り言】

主人公がエロチックなインドの彫刻を見て錯乱状態に陥ったことは確かでしょう。しかし案内役のインド人のアジズ医師に暴行されたとまで言うのはあまりじゃないかと思います。真相は伏せられているわけですが。。。 またイスラム教徒だというアジズが選んだ場所がどうやらヒンズー教の信仰拠点らしいのも訳がわかりません。偶像を厳禁するイスラム教を信仰する者がヒンズー教の神像を単に美術品として外国人に披露することがあるのか? ただ単に異文化・異教徒がわけもわからない信仰対象ということでスルーしてアラベスク模様で装飾されたイスラム教のモスクにでも案内するのが普通ではないのか。。。 考えれば考えるほどわけがわかりません。