【読書ルーム(37) プロメテウス達よ- 原子力開発の物語】
【かわまりの読書ルーム『プロメテウス』第2章 新時代の錬金術師たち〜科学の教皇が旧大陸を去る. 4/8 】
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【本文】
一九三○年台の初頭にこれからの十年が科学の飛躍的な発展の十年になると予測した者がいたとした
ら、その予測には確乎たる根拠があった。十九世紀の終わりから二十世紀の始めにかけて実験室内においてX 線、そして放射線が発見され、理論の上ではニュートン力学を刷新する相対性理論の発表などといった一連の目覚しい科学の発展が相次ぎ、それらを感性豊かな幼少の日に知って自然科学を志して一九二○年台に高等教育を受けた青年らが正に知識と体力が充実した壮年期に達したのが一九三○年台なのである。
一九一四年にわずか十六歳で学校を休学して母マリー・キューリーと共に世界大戦の前線に従軍し、放
射線技師の訓練を受けたイレーヌ・キューリーはパリ大学での課程を終え、母の助手の物理学者フレデリック・ジョリオと結婚し、正式な姓をジョリオ=キューリーと改めて結婚後も研究を続けた。夫婦が共通して選んだ研究テーマは放射線を人工的に発生させることだった。二人は数々の物質にポロニウムから発生するアルファ線を照射した。そして、ベリリウムがアルファ線を受けるとアルファ線とは全く性質の違う放射線を発生するということを発見したのである。
【参考】
【解説】
アインシュタインがアメリカに渡った後にもアインシュタインが生まれ育ったドイツ語圏以外でのヨーロッパでの科学者の活躍の記述は続きます。短い本セクションはフランスのジョリオ=キューリー夫妻の活躍についてです。歯に絹着せぬ言動で知られるアインシュタインがドイツのナチス政府と対立して早々と新大陸に亡命してもヨーロッパの科学の水準が急激に衰えたわけではなかった。しかしこの時点でヨーロッパで研究に従事していた科学者達はあるものは時流に逆らい、あるものは時流のために身を隠し息をひそめることになる。