かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(164) 山猫 (The Leopard) 〜 新旧の鬩(せめ)ぎ合いという混沌 9点】

【映画ルーム(164) 山猫 (The Leopard) 〜 新旧の鬩(せめ)ぎ合いという混沌 9点】 平均点:7.17 / 10点(Review 29人)   1963年【伊・仏】 上映時間:161分 クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。

 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=431

 

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【あらすじ】

19世紀後半、貴族に分割統治されていたイタリアを他ヨーロッパ諸国と同じ近代統一国家にまとめようとしたのはガリバルディに率られた赤シャツ党員などの庶民だった。旧体制を頑なに擁護するシシリアの貴族ドン・ファブリツィオは、自分を慕う若い女たちと別れて赤シャツ党に合流しようとする甥のタンクレディを暖かく送り出す。しかし、イタリア統一運動に干渉する外国勢力と赤シャツ党との激しい衝突を収めるためにサルジニア島の領主(国王)ヴィットリオ・エマニュエレ二世が立ち上がり、大勢は国内旧勢力のエマニュエレに傾いていく。

 

【かわまりのレビュー】

ここは少し待ってください。

 

10点の人のレビュー

1.”現状を守りたければ、変わらなければならない””獅子と山猫の時代は終わった、 あとは、ハイエナと羊が残るのみ。 ... ”地方の郵政貴族の没落と21世紀の日本国を予見したような傑作です【Waffe】さん [ビデオ(字幕)] 10点

2.貴族出身のヴィスコンティによる貴族のいやらしさと崩壊を描いた傑作だと思う。ヴィスコンティの作品は貴族の退廃といいますか、貴族の内幕モノという印象があります。アラン・ドロンがクラウディア・カルデナーレに婚約指輪を贈る、大喜びする彼女。けれど平民の娘である彼女にはそれなりの指輪を選んでいるのね。同じ貴族に「安物ですよ」と囁くドロン、貴族のいやらしさがうまく描かれていたシーンだと思う。細かな演出、特にバート・ランカスターの気品ある振る舞い所作など見事です。豪華絢爛、これぞ映画を観た!と堪能できる作品。【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 10点

3.サリナ公爵、そうとう腹黒い男と見た。政局が不安定なイタリアの議員になるより、甥の義父に恩を売った方が得だと計算したんだな。【Snowbug】さん [DVD(字幕)] 10点

4.《ネタバレ》 完全版で鑑賞。一大叙事詩という意味では「バリー・リンドン」と似ている。こちらはもっと人物描写に力を入れながらも、一つの時代の終焉を描く。時代の終焉とはすなわち、その時代の象徴であるサリーナ公爵の内面の死を意味する。ラスト、大舞踏会のシーンでサリーナ公爵が予感する「老い」や「死」とは決してサリーナ公爵という人物の死という意味のような生やさしいものではない。自分の生きてきた、信じてきたイデオロギーの死を確信しているのである。重厚な演技と相まって、えもいわれぬ哀愁と尊厳をそこに感じる。また、この時代考証と徹底的な絵作りは凝っている、なんてレベルではなく、1860年代当時のイタリア(もちろん見たことはないが)そのものである【Balrog】さん [DVD(字幕)] 10点

 

【独り言】

すぐ上 4. のBalrogさんに💐🎉👏を贈りたいです。2. のenvy さんもよくぞ気づかれました。このシリーズ初のレビュー無しであらすじだけでの掲載ですが、それには訳があって、criterion社から出ている英語注釈付きのDVDを見てからこことjtnews.jpの両方に投稿しようと思ったのですがディスクが見つからなくてこのように相成りました。もう一度英語字幕・英語注釈音声で鑑賞すればきっと新しい発見があると思います。掲載中の拙著の歴史小説の方が一皮も二皮も剥けて成長した主人公を描く(自分で言うのも変ですが)いわゆる佳境に入るのでその前に舞台となるイタリアの数十年ほど後の様を捉えた本作を紹介しておきたかったのです。

 

【参考】

【かわまりの映画ルーム(140) 眺めのいい部屋 〜 新旧の鬩(せめ)ぎ合いというダイナミズム 7点 (https://kawamari7.hatenablog.com/entry/2020/05/06/223513?_ga=2.196116526.300089612.1614860580-321526888.1614424376)】は原作と映画作品ともにイギリスの作品でイギリスとイタリアの近代化を対比してみるのに役立ちます。またイギリスの作品の方にはバイロンが第二の故郷と感じていたかもしれないイタリアのトスカナ地方、特にフィレンツェの景観が頻繁に登場します。

 

【かわまりの映画ルーム(93) 夏の嵐(1954). 〜 破れかぶれの悲恋 9点 (https://kawamari7.hatenablog.com/entry/2019/12/12/113131)】はイタリア半島西側の海洋都市シチリア島を舞台にした本作「山猫」と同じヴィスコンティ監督による名作で同じ時代のイタリア半島西側の海洋都市ヴェネツィアを舞台にしています。しかも主人公は同じく貴族階級に属し、ただこちらは女性です。「山猫」で最後までバート・ランカスターと主演の座を争ったのはイギリスのシェイクスピア俳優のローレンス・オリビエでしたが、高貴な永遠のイケメンのイメージがあるオリビエが「山猫」の主演を射止めていたら「山猫」は「夏の嵐」の女性版ということになっていたでしょう。バート・ランカスターの「山猫」そうではなくて「夏の嵐」西海岸版…では訳がわからないでしょうが、ランカスターの渋い面影は貴族である以前に「土豪」で、強い生命力と加齢による洗練の両方を写しています。もちろんランカスターが演じるファブリッチオは既にイタリアの未来の為に心血を注ぐことが出来る年齢ではないのですが……彼の生命力を具現してくれるかと期待させたアラン・ドロンが演じるタンクレディは……アラン・ドロンがミスキャストだったわけではなく、これでいいのです。ご意見・ご感想はj「みんなのシネマレビュー(jtnews.jp)」に登録してそちらでどうぞ。

 

 

ガリバルディ (ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3?wprov=sfti1

 

ヴィットリオ・エマニュエレ二世 (ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AC2%E4%B8%96?wprov=sfti1