かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(24) 小さな村の小さなダンサー 〜 歴史を作るフツーの兄ちゃん 8点】

【かわまりの映画ルーム(24) 小さな村の小さなダンサー  〜  歴史を作るフツーの兄ちゃん 8点】平均点:7.00 / 10点(Review 5人)  2009年【豪】 上映時間:117分. クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=18502

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【あらすじ】

革期の中国。山東省の農村から北京の英才舞踊学校に連れてこられた李存信(リ・ツンシン)少年は芸術を毛沢東主義普及の手段とする風潮の中、優雅で軽快に舞うためにひたすら練習に励む。20歳でアメリカに短期留学したツンシンは怪我をした主演ダンサーの代役としてテキサス州ヒューストンで鮮烈なデビューを果たすが、留学期限が近づいた頃にはアメリカ人バレリーナと恋に落ちていた。アメリカ人女性との結婚などの方法によってツンシンはアメリカに合法的に居住し、ダンスを続けることができるはずだったのだが・・・。

 

【かわまりのレビュー】

英語の予告編で華麗なグラン・パ・ドゥ・ドゥー(男女ペアの舞)を見せつけられ、英語サイトであらすじを読んだ後にこのサイトで初めて戴思傑原作・監督の「小さな中国のお針子 」のパクリみたいな邦題を見て「あれっ?」と思ってしまいました。なぜ、英語のタイトル(Mao’s Last Dancer)を直訳しなかったのか・・・。でも、作品を鑑賞した後では邦題のほうが内容をより良く言い当てているのかもしれないと思っています。英語サイトには「毛沢東主義に染まった中国人芸術家が共産主義に疑問を持ち・・・」なんて書いてありましたが、こんな堅いことは一切抜きで鑑賞できる作品だと(少なくともわたしは)思うからです。文化大革命などといった歴史のうねりと比べて芸術家であろうがなかろうが、一人一人の人間の力がいかに小さく弱いものであるかが描かれているようでもあります。天職のダンサーとしてはより高く飛び、より美しく舞うことしか考えず、一人の青年としてはごく平凡にカンフー映画やディスコ、そして女の子とのデートに興じる主人公の李存信の生き方を見て、「これでいいじゃない。こういう人が歴史を作るんだ。」と妙に納得したりしました。主人公は普段着の時はどこにでもいそうな東洋人の兄ちゃんですが、彼が舞台衣装を纏い、メイクを決めて居並ぶ白人群舞ダンサーたちをバックにしてソロを演じる様には本当にぞくぞくさせられました。わたしも同じ東洋人だからだと思います。異論もあるでしょうが、わたしはこの作品は少女コミックにあったようなスポーツ根性ものの一種ように鑑賞するのが自然だと思います。レオタードではなく白いシャツと黒いズボンを身に着けた中国人の少年たちが舞踊学校で次第に高度な舞踊技術を身につけていく様、初めて女の子とパ・ドゥ・ドゥーを舞う時の主人公たちの恥じらいの表情、そして五星紅旗と青空をバックにしての主人公とアメリカ人女性との普段着のままでのパ・ドゥ・ドゥーなど、何も考えずに見ても(考えてもいいですが)楽しめます。デビューの舞台上でのフラシュバックがやたら長いこと(一番強烈な中国古典の射手の寓話だけで十分)、そして奥さんとの経緯がいまいちはっきり描かれていないことが減点要因です。

 

 

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