かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(7) ガンジー 〜 聖人はいかに生まれたか 10点】

【かわまりの映画ルーム⑺ 〜 聖人はいかに生まれたか  10点】平均点:7.73 / 10点(Review 90人)  1982年【英・インド】 上映時間:188分    クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=75

 

このブログの内容全ての著作権はかわまりに帰属し、映画タイトルの次、"〜"のすぐ後ろのキャッチコピー、【独り言】と【参考】を除く部分の版権はjtnews.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。

 

【あらすじ】

非暴力抵抗運動の元祖マハトハ・ガンジーの伝記。南アフリカで弁護士業務のかたわら人種差別反対の手段として非暴力の人権主張運動を定着させたことを出発点に、ガンジーは祖国インドで宗教の違いを超えた民族自決の精神を培い、イギリスへの経済的依存からインドを脱却させようとする。投獄と釈放を繰り返し、財産は身にまとった一枚の布と杖だけになっても抵抗運動の指導を継続し、断食という手段で身をもって民衆の感情の過熱を制しようとするなど、超人的な努力と自己犠牲を払った崇高な魂の軌跡を描く。

 

【かわまりのレビュー】

世界一の映画大国といえば・・・言わずとしれたアメリカ・・・ではありません。年間製作本数と観客動員数ではインドが世界のトップだそうです。だから、この映画でエクストラも含め、インド・パキスタン系の俳優が何百人、もしかしたら延べ何千人の規模で登場し、主要な人物全てが打てば響くように好演されているのも何ら不思議ではないはずなのですが、それにしてもこれだけのスケールで多数の登場人物とエクストラがCGなしで撮影・オーガナイズされている背景にはやはりかの非暴力抵抗運動の元祖、マハトハ・ガンジーの足跡を何が何でも映像にしたいという映画人の執念、さらには非暴力を唱えながら暴力に倒れたガンジーがあの世から映画製作を指揮しているかのような鬼気さえ感じないわけにはいきません。 教科書的に鑑賞した箇所も多かったのですが、いかにも青年弁護士でハンサムでかっこよかった若いころのガンジーや「塩を作るキャンペーン」や「国産衣料を着るキャンペーン」など、子供のように思いついたことをすぐに実行に移す姿が印象的てした。ガンジーの希望に反して印パが分離独立した直後、印パ国境付近をイスラム教徒難民が北上、ヒンヅー教徒難民が南下するシーンは悲劇的で圧巻でしたが、パキスタン出身インド在住のヒンヅー教徒の人によると分離独立後、インドはイスラム教徒に対して寛容だったけれど、パキスタンはヒンヅー教徒を容赦なく追い出したそうです。この映画はドキュメンタリーではないのでカンジー翁の遺志にそった脚色が随所にあるのかもしれません。歴史上、「神の下の人間の平等」を説いた宗教家は多数存在しましたが、世界史上最初で最後になるかもしれない「全ての神の平等」を説いた宗教家を力強く描いています。

 

 

10点(最頻出点タイ)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=75

7点(最頻出点タイ)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=8&TITLE_NO=75

 

【独り言】

この映画で初めて知ったのですが、マハトハ・ガンジーは生粋のインド人ではないのですね。彼の少年時代には触れられていませんが、イギリスで法律を学んで人種差別の激しい南アフリカで弁護士を開業して子供たちが独立してからインドに来たのか戻ったのかしたようです。人種のるつぼ(というよりわたしが感じるのは人種と文化のモザイク)と言われるアメリカに暮らして思うのは、この国で社会制度に良く適応している比較的新しい移民の子孫は旧イギリス殖民地だった人たち、つまりインド人やパキスタン人、バングラデシュ人だということです。ベルリンの壁が崩れてソビエト連邦が崩壊した後に文明間の衝突が起きると予言したのはサミュエル・ハンチントンだったけれどそれが一番顕著に起きたのはヒンズー教キリスト教でもなく、儒教キリスト教でもなく、中東のイスラム教徒対 キリスト教徒なのでわたしの思い込みかもしれないけれど旧イギリス殖民地だったインド、パキスタンバングラデシュなどの人々は宗教が違うからと言って他宗教の人々と角突き合わせることもなく、信仰は心の問題で政治は制度の問題、つまり政教分離の原則で器用に生きているような気がします。さて、ガンジーの話題に戻りますが、ガンジーが法律を学んだイギリスは世界で一番古い立憲君主国、その歴史があまりに古いので憲法(Constitution)という名の憲法がない立憲君主国なのです。「王様ばかり威張ってないで貴族のわたし達の言い分も聞いてよ」という中世のマグナカルタから新旧キリスト教のせめぎ合い、近代では労働者の権利を守る法制まで、ガンジーはきっと概観してきてそれらの根底にある権利や義務の概念を頭と心に刻み込んで聖人に成長していったのに違いないのです。より良く生きたいという魂の叫びは人類に普遍的に未開の時代から存在していましたが、それが法律制度に結晶したのは近代になってからです。ガンジーの和魂洋才ならぬ印魂洋才の才の部分は間違いなく法律制度に裏打ちされた権利・義務意識であり、印魂の部分は八百万(やおよろず)より多いか少ないかはわからないインドの神々かそれらの大ボスのアラーの神なのです。