かわまりの映画評と創作

読書ルームではノンフィクションと歴史小説を掲載

【映画ルーム(127) アラビアのロレンス 〜 他民族の文化への憧憬と情熱 7点】

【かわまりの映画ルーム(127) アラビアのロレンス 〜 他民族の文化への憧憬と情熱 7点】平均点:7.95 / 10点(Review 132人)   1962年【英】 上映時間:216分

クレジット(配役と製作者)などについては下URLをご覧ください。https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=732

 

【あらすじ】

第一次世界大戦中のシナイ半島。砂漠の民アラブ人は、民族国家の建設と近代化をいち早く達成したトルコに侵略されつつあった。アラビアの言語や文化に精通したイギリス軍のロレンス少佐は英国の敵ドイツと組むトルコをアラビア半島から駆逐するため、英土両軍が思いもつかない奇襲作戦でトルコの手に落ちたアラブ人の都市を奪還していく。ロレンスの行動の目的は単にイギリスの権益を守ることではなく、アラブ人に自信を回復させ、さらにはトルコ勢力一掃後のダマスカスを中心にアラブ民族の統一国家を樹立することだった。

 

【かわまりのレビュー】

VHSがなくて劇場でしかこの映画を見られなかった時代の感動はものすごいものだったと思います。空の青と黄色い砂の大地を分ける地平線、残酷に照りつける太陽、駱駝を駆る人々等々・・・。でも、美術・音響はずっと優れていると思いながらも同じ民族自決をテーマにした「ガンジー」よりも3点も低い点数をつけた理由は、まず主人公の生き方・・・ガンジーが熟年に達してから本格的に自己犠牲に目覚めたのに対し、ロレンスの行動は若気の至りみたいなところが多分にあるし、(少なくとも作品中では)平気で暴力に訴えるという点、あるいはオックスフォード大学で考古学を専攻したアラブ通で軍人というよりもむしろ諜報部員だったロレンスの知性があまり描かれていない点、それから現在のアラブ世界の有様・・・民族自決(=民主主義)で及第点がつけられるのはエジプトくらいで残りの国々は最悪のイラクを始めとして「アラビアン・ナイトメア(悪夢)」の状態・・・でもこんなこと(特に後者)を映画の評価に加味することが妥当かどうかはわかりません。私個人の見方として理由付きでこのままにしておくと思います。ロレンスとアリとの衝撃的な出会い、「外国人は自分の井戸の水を飲んでもいいが、(先祖代々対立してきた)他部族の者には一滴たりとも飲ませない。」というアリの台詞が現在のアラブ世界の状況を語っています。さて、このアリ役として当初アラン・ドロンだったそうですが、眼の色のせいでどうメイクをしてもアラブ人に見えないので現地の俳優オマル・シャリフが選ばれたそうです。中近東出身の人に向かって以前、「オマル・シャリフって何?」と聞いて呆れられたことがありますが彼はアラブ世界では三船敏郎のような存在で、欧米の映画に民族を代表する役として出演した点は「ラスト・サムライ」の渡辺謙と同じです。アラン・ドロンのアリなんて想像もつかないほど役にはまって、いい味を出していますよね。

 

10 点の人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=732

9点(最頻出点)の人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=10&TITLE_NO=732

10 点の人の秀逸なコメント

1. 中東にあこがれるのはこの映画のせい【kong】さん 10点

2. 「アラビアのロレンス」と言えばP・オトゥール。P・オトゥールと言えば「アラビアのロレンス」と言われるぐらい、他にも多くの作品に出演しているにも拘わらず印象が希薄なのも、彼がいかにこの作品で際立っていたかという証明でもある。彼もまたロレンスを演ずる為に生まれてきたような、そんな男のような気がする。とりわけ彼の端正な顔立ちとその美しい瞳。いかにも英国人らしいアクセントの喋り方などがその最たるもので、中でも酋長に衣裳を贈られ、砂漠でその白衣を纏い裾をひるがえして嬉々として舞い、ナルシズムを表現する姿が強烈だ。さらに映画史において、これほど全編に渡ってスケール感が突出している作品も珍しく、砂漠の雄大さ、美しさ、清潔さ、厳しさ、そして人間と自然との関わりあいをドラマの中で見事に融合させている。ロレンスが消したマッチの焔が、そのまま砂漠の真っ赤な空に変化する場面や、O・シャリフが馬に乗って陽炎漂う遥か彼方から登場し、初めてロレンスと出会う場面など、印象に残る名シーンは枚挙に遑がない。【ドラえもん】さん 10点

3. 母国の帝国主義と民族自立の板挟みになりながらも理想を追ったロレンスの苦悩がひしひしと伝わる。今となっては,と言われるかもしれないが,映画史に残る必見の大傑作と思う。因みにピーター・オトゥールはロレンスの遠縁らしい。オンドマルトノや打楽器を多用したジャールの音楽も抜群だが,タイトルバックにあるように指揮はエードリアン・ボールト(ホルスト「惑星」の初演者)が正しいようだ。(以前のサウンドトラック盤:英国パイ原盤では作曲者の自演となっていたが)【koshi】さん 10点

4. 高校生の頃、映画好きであろう世界史の先生が第一次世界大戦の解説をするたびに『アラビアのロレンス』『アラビアのロレンス』『アラビアの・・・と必ずボソッと言って、本当は授業時間割いてでも語りたかったんだろうなー、と当時感じていた。だが、216分という典型的なクラシック「超」大作が苦手なので、なかなか観ようという気になれずいつも後回しにしていたひと作品。今回劇場でやるということと個人的なロレンスムードwで観に行くことにしました。そしてやっぱりこれは名作だ、ということを確認しました。砂漠の映像やストーリー、音楽など全てがグレイト。高校の世界史の先生もつまんない受験世界史なんか教えるより、「点」の歴史、人物から見る世界史を教えたかったに違いない!と思う。多分受験シーズンにでも見ていたら第一次世界大戦の範囲は満点狙えたかもしれない笑『アラビアのロレンス』という作品に魅せられたわけだが、同時にクラシック映画を(劇場で)観るのもいいな~と思った。DVDだと早送りあるいはチャプターごと飛ばすであろうオーバーチュア・インターミッション、逆に映画館ではすごく良く思われた。インターミッションで休憩できるしトイレで用足しながら脳内リピートできる。むしろオーバーチュア時にはちょっと遅れて入ってくれば良かったとでも思った。そして冗長について(僕はこの映画全く感じなかったが)映画に「無駄」があるっていうのもいいなって。作品によるけど、簡潔さとかコンパクトさとかそういうのにとらわれてないのが逆に贅沢に感じられる。とにかく、この映画を映画館で観れてなんて幸せ者なんだろう、と思う。また観たい!でも次も劇場で。やっぱ家で三時間半観るのはキツいでしょ笑【たいがー】さん [映画館(字幕)] 10点

5. 学生だった頃、初めてこの映画を見て、その意味するところが分からなかったものです。しかし、数年の間、とある発展途上国で過ごした後、映画の中の事柄に対し共感できる部分の多いことに驚かされました。周囲と自分との軋轢、目先の利にしか走らない民衆、数々の不条理な出来事、そして、自分の感情が狂っていく悲しみ…無論、私がロレンス氏と同じスケールで物事を体験できたはずはありません。が、その何パーセントかを垣間見ることができたのだと思います。ここにつけた10点は、この映画に揺さぶられた私の主観(= 思い入れ)によるものなのでしょう。【HIDEKI】さん 10点

 

1点(最低点 1人)の人のコメント

僕は指輪物語プライベートライアンの方がこの映画より退屈しませんでした。【 ss】さん 1点