かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(125) 十戒 〜 民族の誇りが生まれるまで 8点】

【かわまりの映画ルーム(125) 十戒 〜 民族の誇りが生まれるまで 8点】 平均点:6.99 / 10点(Review 67人)  1956年【米】 上映時間:220分 クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/search.cgi

 

【あらすじ】

旧約聖書中屈指の予言者モーゼはユダヤ人として生まれてエジプトの王女の養子となったが、実母が密に乳母となったため成人後もユダヤ人としての自覚とプライドを保っていた。しかし他民族を見下し他民族の文化や自主独立を認めない高慢なエジプト王との間に軋轢が生じ、自分の使命は実兄姉を含むエジプトの高い文明の洗礼を受けながら唯一絶対神を信奉するユダヤ人の一派をエジプトから脱出させてカナンの地に定住させることとだと信じるようになった。CGのない時代に巨額の費用と人員を投入して制作されたハリウッドの記念碑的大作。

 

【かわまりのレビュー】

むかしむかしあるところに… ヘブライ人という人々が住んでいました…。とお話を始めるのが本来なら適当かと思います。本作品はエジプトナイル川のほとりで「ファラオ(王)がわたし達ヘブライ人の男の子を皆殺しにする命令を出したけれどこの子だけは。。。」と母と娘が生まれたばかりの男の子(後のモーゼ)をバスケットに入れて川に流すシーンから始まります。ヘブライ人(ユダヤ人)はナイル川の恩恵で生産性が上がったエジプトに労働力として移住してきたようですが、この民族は他民族と異なり、原始多神教ではなく唯一絶対神を信仰し、後年世界宗教となるキリスト教イスラム教の間接的な始祖、ひいては法律や科学の基礎を築く民族になるのです。さて、お話しはほとんど終盤までユル・ブリンナー演じるファラオがこれでもかこれでもか、と言わんばかりにモーゼとヘブライ人を弾圧する内容に終始しますが、その過程でモーゼの杖が毒蛇に変わったり、モーゼが神の声に導かれたりな等々、それはモーゼとヘブライ人達が「そうだ。われわれは神に選ばれている。われわれは世界の創造者たる唯一絶対神を敬う民なのだ!」と民族の誇りを獲得していく過程なのです。そして最後近くで神からの十ヶ条の戒めを与えられたモーゼが「規則なくして自由はない!」と宣言しますが、これこそ現在、宗教を問わず国家の基本となっている法治主義の起源なのです。数々の奇跡のスペクタクルが目を楽しませてくれる作品ですが、現在先進国に住むわたし達が当然と受け取っている考え方の源流を探ってみると面白いです。

10 点の人のコメントと秀逸なコメントの抜粋

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=1505

1. ●過去、テレビで何度か目にしたはずなんですが、海が割れる場面、十戒が書かれる場面を断片的に記憶しているだけでした。今回、旧約聖書の基礎を勉強してから通して鑑賞すると、3時間超えを忘れるほど面白く感じました。なるほど、あの記述を映像化したらこうなるんだと。●ユル・ブリンナーは今作では悪役で、最後の方は気の毒なほどですが、男前ですね!●登場人物中、モーゼの次に信念が強いのは、何度も奇跡を目の当たりにしながら隙あらば「エジプトに帰って奴隷に戻ろう!」と言い放つデイサンでしょうね・・・。【次郎丸三郎】さん [DVD(字幕)] 10点

2. 僕にとってこの作品は特別な意味合いがあります。まだ幼稚園に上がるか上がらないかというときに初めてこの映画を見たのですが、この映画は僕に映画の持つ壮大さ、面白さ、そして素晴らしさをこれでもかというほど教えてくれました。年齢のせいもあってか、そのころは難しい事もわからず、それでもヘブライ人がモーゼと共にエジプトを出る場面や、ファラオの軍勢が迫る中紅海を渡る彼らの姿に手に汗握りましたが、今こうして見返してみると、こうしたスペクタクル場面以上に、この映画は愛、希望、そして自由をテーマにしているということに気付きました。ビシアがモーゼを想う深い愛に共感し、実の母であるヨシャベルの心の内に涙し、またヘブライ人が何故虐げられねばならないのかという(モーゼの)同胞の言葉に心を打たれ、遂に彼らが奴隷という身分から開放され、世界に初めて“自由”が誕生した場面では、彼らと共に喜びを分かち合いました。勿論僕は無神論者であり、ユダヤ教選民思想キリスト教の絶対主義などは好きではありませんが。しかしながら、彼らは「こうした苦役からいつか主は救ってくださる。我々は選ばれた民であり、主は我々を試されておられるのだ」と“信じる”ことにより、明日を生きる“希望”を得ていた、と考えれば、それをすべて否定することは僕には出来ません。宗教的な意味合いが深く、難解な部分も多い映画ですが、それでも僕にとってこの映画はマイ・ベストであり、何よりも自分の原点であるので、点数は言うまでもなく満点を差し上げたいです。
【クリムゾン・キング】さん 10点
3. 30年ほど前に2番館で見た。一緒に見た友だちが聖書を買おうとした。その10数年後再び別の洋画系の2番館で,最後は湾岸戦争終結記念(?91年2月だけどまさかね)にテレビでやっていた。思い出深いと同時に映画の楽しさ・素晴らしさ・難しさを教えてくれた印象深い作品である。監督のデミルという人はスペクタクルに絶対の自信を持っていたそうだが,今後そのような監督は果たして出てくるのだろうか。そして,壮大・壮麗な一大史劇はもう見られないのだろうか。【koshi】さん 10点

 

7点(最頻出点)の人のコメント

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=8&TITLE_NO=1505

 

0点の人のコメント

1. こういう映画を好きになれないのは僕がまだまだ子供だからでしょうか・・・。内容が重いし長いしコロコロ展開が変わるしでついていけませんでした。ちょっと宗教モノは嫌いですし・・・。といって軽蔑するのはよくないんでしょうけどね、ホントは。でもやっぱり高い点数はつけられません・・・。【カワセミ】さん 0点

2. 見ましたけど、私には理解できませんでした。どうも独善的な気がしてしまって。いまのイスラエルアメリカがこういう思想を地でいってたら、どらえもんのジャイアンとかわんないような気がして、世界平和など夢のまた夢と思われます。【たけたけ】さん 0点