かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(173) マルサの女(再)  〜 社会派監督に合掌 8点】

【かわまりの映画ルーム(173)   マルサの女(再) 〜 社会派監督に合掌 8点】 平均点:7.79 / 10点(Review 113人)   1987年【日】 上映時間:127分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=1446

 

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【あらすじ】

おかっぱ頭とそばかすがトレード・マークの板倉亮子(宮本信子)はベテラン税務署職員。亮子の手にかかれば姑息な所得隠しをするパチンコ店経営者(伊東四郎)などは真っ青になる。そんな亮子が目をつけたのはラブ・ホテル経営・・・所得隠しの手口を探ろうと亮子は経営者(山崎努)宅を訪ねるが、そこは相手もその道の達人・・・頭を抱える最中に国税庁査察部の検査官、通称マルサへの亮子の抜擢が決まる。税金調査に関する警察権を取得した亮子と査察部の猛者達はどのようにしてラブ・ホテルの所得隠しの謎に迫るのか ・・・。

 

【今回のハイライト(YouTubeから特別出演)】

元財務官僚でつい最近まで内閣参与(タダみたいな報酬で内閣に助言する官僚OBや学識経験者)の高橋洋一さんが若きキャリア官僚として地方の税務署(国税)に出向した時の思い出を語ります。→  https://youtu.be/EEv3Wm_AQ74

 

【かわまりのレビュー】

あらすじを書いた後で直ぐにレビューを書かず、そのうち「こんな名作、みんなが寄ってたかって書くからいい!」というズボラ根性を発揮し、そのうち書いたような気になっていました。この作品、印鑑文化とか銀行通帳といった日本ならではの慣習をキーとして描写しながらも世界中、特にアメリカで大受けしたのはやはりタックスポリスと脱税者というお金だけを巡るせめぎ合いを描いたおそらく世界初の作品だったからでしょう。山崎努が演じる守銭奴の権藤は「奥さんに本当に惚れていたら離婚して慰謝料をガバっとやってから再婚するんだぜ。慰謝料は非課税だからな。」と合法手段での節税からきわどい手段までを駆使するなぜか憎めない男ですし、彼に相対するマルサの女も「再婚する前に奥さんが逃げちゃうかもね。」というなかなかのキレ者でこの二人のやりとりが最後まで息をつかせませんでした。

 

10 点の人のレビュー

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=1446

秀逸なレビュー

1.  《ネタバレ》 伊丹十三作品の中ではタンポポと悩みましたが、WOWOWハイビジョン初放送でこちらのほうが先だったので満点つけてしまいました。あまりにも放送が待ち遠しくてD-VHSに録画しながらも、同時に生で見てしまいましたが、4:3放送だったのには唖然としました。画質はアップコンバートでなく、ハイビジョンだったのでまぁ許しますが・・・。と、映画の本来の話からちょっとそれてしまいましたね。
良いですね。もう20年近く前の作品とは思えません。キャスト(顔や人気だけの俳優)に頼らず、ここまでテンポの良い作品に仕上げているのが素晴らしいです。税金用語が分からない人への用語説明を俳優の会話の中に入れてみたり、脱税された陰湿な方法などを紹介してみたりと無駄なカット・シーンは一切ありません。どうしても小道具では年代車・黒電話・ショルダータイプ携帯電話・パチンコ台・各キャストが若いなど”歴史的古さ”は感じますが、カメラ割りとか音楽、編集技術など映画としての古さは全然感じないどころか、未だに追いつけていない邦画が多いことは、伊丹監督にはまだまだ作品を作って欲しかったなぁ~と感じます。
私はWOWOWの営業ではありませんが、伊丹十三監督作品が12月末まで随時放映されますので、皆で見ましょう!!(笑)【お好み焼きは広島風】さん [CS・衛星(字幕)] 10点

2.  《ネタバレ》 抜群に面白い!もぅTVでは何回も観てるけど今回大真面目に鑑賞致しました。エンターテイメントに振った娯楽性もさることながら、マルサと脱税をテーマにした着眼点が素晴らしい! そして的確な配役・効果的な音楽、、、間違いなく伊丹監督の代表作ですね。何度見ても面白い映画というのは、こういうものを言うのでしょう。もうホント素晴らしい!文句なしに満点でゴザイマス【Kaname】さん [CS・衛星(邦画)] 10点

 

低い点数の人のレビューは最低点の4点の人のみ

テーマの珍しさはいいのですが、マルサ側が国家権力だけあって強いのでドラマや緊迫感は弱い気がしました。私が子供なだけかもしれません。【Donatello】さん [DVD(邦画)] 4点(2017-07-25 11:06:47)

 

【独り言】

日本人とアメリカ人の共通点は…わたしが思うに自分が所属した組織で、自分に与えられた仕事に正に一生懸命になってしまうところだと思います。だから世界の供給源の9割だかを占める純度99.9999999999%(いわゆるトゥエルヴナイン)の半導体洗浄用のフッ化水素やら世界の7割(?)かそれ以上を占める内視鏡等々を日本人は続々と作り出したのですが、わたしが日米で似ているかアメリカの方が少し上?と感じたのは出入国管理や税徴収に携わる公務員たちです。もっとも、わたしはアメリカ入国の際は外国人、日本に入国する際には本国人なので公正な比較は不可能なのですが…。税金徴収に関しても同様です。アメリカではIRS(Internal Revenue Services = 税金と社会保険料を徴収する役所)と言えば泣く子も黙る権威のある機関です。なぜアメリカ人が自分に与えられたポジションで一生懸命になるのか… アメリカ人ではなくアメリカも含むキリスト教新教の地域(アメリカ+イギリス、ドイツとスイスの一部)ではありますが19世紀から20世紀にかけて社会学の基礎を築いたとされるマックス・ウェーバーは宗教によって説明しました。だったら日本は…???  ご心配なく。ウェーバーは日本とインド(だったと思います)についても説明を試みましたがテーマがあまりに深くて広かったので生前にまとめることができませんでした。何だか闇のクマさんの次の動画を見ていたらこのことが何故か頭にぽっと浮かびました(https://youtu.be/TU-adOsAU70)。日米韓は今までは共産主義に対抗するためにタッグを組んでいましたが、儒教が染み渡っている韓国をアメリカは見限ったようです。もっとも儒教の真髄を実現しているのは韓国ではなく日本だと元中国人で日本に帰化した評論家の石平さんが語っています。また、アメリカの国際政治学者のハンチントンは20世紀後半をに顕著だった東西のイデオロギー対立が解消された後、21世紀には法治主義を掲げる欧米や日本と儒教に基づいた人治主義を掲げる中国とその衛星国との間に対立が起きると予言していました。ハンチントンは大まかにはイデオロギーの対立から文明の対立に移行すると言ったのでわたしは対立はキリスト教圏とイスラム教圏との対立が起き、それは対岸の火事かつ勝ち目はキリスト教圏にあるに決まっていると鷹を括ったものですが、某国による尖閣周辺の領海侵犯などを見るにつけ、状況はのっぴきならないようです。