かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(158) パラサイト 〜 韓流ドラマは苦手だけれど… 5点】

【かわまりの映画ルーム(158) パラサイト 〜 韓流ドラマは苦手だけれど…韓国は断末魔では… 5点】 平均点:7.30 / 10点(Review 47人)  2019年【韓】 上映時間:133分

クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=25556

 

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【あらすじの独り言】

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【かわまりのレビュー】

えらく評判がよくていろんな国際映画祭の賞をいくつか受賞していることと昨今の日韓の軋轢を理解し、隣国をより良く理解する一助にならないかと思って映画館に出向きました。結果は完成度という点ではかなり高得点をつけてもいいけれど、隣国を理解できるかという点においてはほとんど得るものがなありませんでした。それになんと言っても後味の悪さ、胸糞の悪さは半端ではありませんでした。このままで行けば本作品はオスカーの外国語部門にノミネートされるのではないかと思いますが、今まで日本の作品でノミネートされたり受賞に漕ぎ着けた作品は全て、多かれ少なかれ、日本をアピールするものでした。そうでない場合は、アニメ作品に顕著ですが、「魔女の宅急便」のように外国を舞台にしたりしています。でも本作品で韓国を写しているところだあるとしたらそれは階級格差なのか、作品の中盤で登場する多重債務男なのか。。。 鑑賞中半ばで隣に座っていた中年のアメリカ人男性が席を立ちました。エンドロールの時に後ろに座っていた若いカップルが「良かった!」と言ったので「ハリウッド映画のコピーじゃない。だったら字幕のないハリウッド映画を見た方がいい。」と言ったら納得していました。家に帰ってから「おくりびと」の巻頭の部分を見ましたが、やはりのっけから仏教の様式美とチ〜〜ンの音。。。本作品をあえて劣化コピーとは呼びませんが、監督も製作者もハリウッド映画を見まくって「こうでないといけない」という型を学んで模倣しているとしか思えませんでした。本作品の完成度に高得点を付けるのは構いませんが、世界の知られざる文化を紹介しているかいないかという点においてはオスカー受賞は別の作品であって欲しいです。過去に7点をつけた韓国作品の「シュリ」も同じで最近減点しようと思っていたのであらかじめ低い点をつけておきます。暴力と流血がダメな方にはお勧めしません。

 

10 点をつけた方(1人)のレビュー

《ネタバレ》 金持ち家族に「寄生」することで、束の間の“優越感”を得た半地下の家族たちは、今までスルーしてきた家の前で立ち小便をする酔っ払いを、下賤の者として認識し、“水”をかけて追っ払う。
その様をスマートフォンのスローモーションカメラで撮りながら、軽薄な愉悦に浸ってしまった時点で、彼らの「運命」は定まってしまったのかもしれない。

世界中に蔓延する貧富の差、そして生じる「格差社会」。世界の根幹を揺るがす社会問題の一つとして、無論それを看過することはできないし、自分自身他人事じゃあない。
ただし、この映画は、そういった社会問題そのものをある意味での「悪役」に据えた通り一遍な作品では決してない。
確かに、“上流”と“下流”、そして更に“最下層”の家族の様を描いた映画ではあったけれど、そこに映し出されたものは、富む者と貧しい者、それぞれにおける人間一人ひとりの、愚かで、滑稽で、忌々しい「性質」の問題だったように感じた。

どれだけ苦労しても報われず、働いても働いても豊かになるどころか、貧富の差は広がるばかりのこの社会は、確かにどうかしている。
でも、自分自身の不遇を「社会のせいだ」「不運だ」と開き直り、思考停止してしまった時点で、それ以上の展望が開けるわけがないこともまた確かなことだろう。

そう、どんなにこの社会の仕組みがイカれていたとしても、どんなに金持ちが傲慢で醜かったとしても、この主人公家族の未来を潰えさせてしまったのは、他ならぬ彼ら自身だった。と、僕は思う。

千載一遇の機会を得た半地下の家族たちは、能力と思考をフル回転して、或る「計画」を立て、実行する。そしてそれは見事に成功しかけたように見える。
しかし、彼らの「計画」はあくまでも退廃的な“偽り”の上に存在するものであり、「無計画」の中の虚しい享楽に過ぎなかった。

“無計画な計画”は、必然的に、笑うしか無いスピード感でガラガラと音を立てて崩壊し、大量の濁流によって問答無用に押し流される。
そして同時に、己をも含めたこの世界のあまりにも残酷で虚無的な現実を突き付けられて、父子は只々愕然とする。

本当に裕福な者たちは、自らが“上流”に居ること自体の意識がない。
下流”に住む貧しい者たちの存在などその認識から既に薄く、蔑んでいることすら無意識だ。
“臭い”に対して過敏に反応はするものの、その正体が何なのかは知りもしないし、知ろうともしない。
勿論、大量の“水”で、押し流していることに対しての優越感も、罪悪感も、感じるわけがない。その事実すら知らないのだから。

なんという「戦慄」だろうか。
そのシークエンスの時点で、観客として言葉を失っていたのだが、もはや「世界最高峰」の映画人の一人である韓国人監督は“水流”を緩めない。

「惨劇」の果てに、計画どころか「家族」そのものが崩壊し、消失してしまった父と息子は、それぞれに、「無計画」であり得ない逃避と、あり得ない希望に満ち溢れた「計画」を立てる。
すべてを失った者たちが、それでも生き抜く力強さを表現している“ように見える”描写を、この映画は、最後の最後、最も容赦なく押し流す。
父親が言ったとおり、「計画」は決して思い通りにはいかない。父と息子は、地下と半地下でその短い命を埋没させていくのだろう。

完璧に面白く、完璧に怖く、完璧におぞましい。だからこそこの映画は、完膚なきまでに救いがない。
とどのつまり、このとんでもない映画が描き出したものは、「格差社会」などという社会問題の表層的な言い回しではなく、その裏にびっしりと巣食う際限ない人間の「欲望」と「優越感」が生み出す“闇”そのものだった。


世界中に蔓延するこの“闇”に対して“光”は存在し得るのだろうか。

金持ち家族の幼い息子がいち早く感じ取った“臭い”。
彼はその“臭い”に対して、どういう感情を抱いていたのだろうか。
“トランシーバー”を買ってもらうことで自らの家族と距離を取ろうとした彼の深層心理に存在したものは何だったのか。

このクソみたいな世界の住人の一人として、せめて、そこには一抹の希望を見出したい。
【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 10点

 

最低点4点をつけた方(1人)のレビュー

《ネタバレ》 パラサイト-寄生。なんかこの言葉から連想する厭らしい「したたかさ」や「ジメっとした感覚」そんなちょっとした「怖いもの見たさ」を満足させてくれる映画を期待していった訳ですよ。「庇を貸して母屋を取られる」的なジワジワした怖さをね…でもごめんなさい、全然違っていましたね。
前半の金持ち一家への侵入は、多分コメディーパートなのでしょうか、正直あまり面白くなかったです。金持ち一家に入り込んで寄生する過程がもっと綿密で絶妙なものを期待していたのに、胸をすくような詐欺手口とは全く別物。あの社長一家はみんなしてチョロすぎでしょう。家庭教師はともかく、自分の命を預ける運転手や食事を任せる家政婦の選定にこの杜撰さはちょっと…。そんな有り得無さがのほうが気になってしまい、ほとんど笑えませんでした。
でも後半の計画が破綻し始めるあたりから怒涛のスプラッターな展開、こうなってようやく持ち直してきた感はありました。「匂い」の使い方なんかはとても印象的で良かった。でも前半のがっかり感を挽回できるような、うならせる展開には残念ながら至らなかったようです。

全体をとおして思い返してみれば、格差社会批判としても詐欺モノとしてもコメディーとしても微妙な感じの仕上がりだと思うのですが、なぜこんなに話題作とされているのか…2019年は映画不作の年だったってことですか?
ひょっとしたら、「初のアジア発作品賞」とか「定説を覆した四冠達成」っていう話題性を作り上げないといけないほど、アカデミー賞自体が行き詰まっているってことなのかもしれませんね……
【ぞふぃ】さん [映画館(字幕)] 4点

 

9点の方レビュー

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=10&TITLE_NO=25556

5点の方のレビュー (わたしも5点をつけました。

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=6&TITLE_NO=25556

8点(最頻出)の方のレビュー

https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=25556

 

【独り言】

最高点(10 点)最低点(4点)つけた方の両方に突っ込みどころがあるんですよね。もっともディスりではありません。本ブログ【映画ルーム】の母体である「みんなのシネマレビュー(jtnews.jp)」では他のレビューワーを貶すことは禁止されていて禁を破るとレビューを消去されてしまいます。わたしは他の方レビューを褒めて消去されたレビューが一つあります。ということで、「みんなのシネマレビュー(jtnews.jp)」のほうでは他レビューワーに触れるレビューワーは皆無なのですがご心配をなく。10 点をつけた【鉄腕麗人】さんレビューからですが、「単なる格差社会を描いたのではなく人間の飽くことのな欲望と優越感が作り出す闇を描いている」ので戦慄覚えるとのことですが、これはあくまで韓国という特殊な社会であるから飽くことのない欲望が格差社会形成に結実してしまったのであってわたしは楽観視しています。18世記後半にスコットランド産業革命の初期段階を目撃したアダム・スミスは経済主体のそれぞれが自分の欲望を追求してもなお経済や社会の秩序が保たれることを説くために有名な「国富論」を執筆しました。但しこれには但し書きあるはずで、アダム・スミスはそのことを「国富論」を超える大著になるはずだった「道徳感情論」で表そうとしましたがこれは絶筆に終わってしまいました。スコットランドを含むイギリスはこの後本格的な産業革命と階級分類を経験し、アダム・スミスから約百年後にイギリス滞在したドイツ人のカール・マルクスが階級社会をつぶさに観察して「資本論」を執筆して資本主義の不公平は共産主義革命によって正されると説いたのですが、結局共産主義革命が起きたのは先進資本主義国ではなく、資本蓄積が未熟な発展途上国においてでした。この事実をマルクスが生きていたらどう説明したのでしょうか? わたしはかえすがえすももしアダム・スミスが「道徳感情論」を完成していたら、あるいはマルクスが図書館に通う代わりにイギリスの国会に通い詰めて議会を傍聴していたら独裁者スターリン台頭もクメールルージュの大虐殺も中国の文化大革命での混乱もなかったのではないかと思うのです。さて、韓国ですが、1911年に日本が併合した時も、また日本の敗戦によって1945年に独立した時でさえ、朝鮮半島は資本蓄積が充分だとは言えませんでした。だから韓国の事業家が発展を継続させようとしたら間違っても本作品の中のパク家のように高台の豪邸に住むべきではなく、社内留保を厚くし、自ら質素な生活に甘んじ、レトルチャパックのジャージャー麺を食べたくなったら奥さんが自分で料理するべきなのです。そうすることによって給与の低い若年従業員に会社の発展に資する献身と倹約の精神を教え込むことができるのです。日本の企業はそうして発展してきました。この点はマルクスが「資本論」の中で「拡大再生産」という労働力の搾取を原資とするいかにも汚らしいものとして記述しているようですが、見方を変えれば(それほど大部でもないのに恥ずかしながら未読ですが)マックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で説いている禁欲と欲望のバランスが社会と経済を発展させるという仮説が説明する挑戦的な社会に韓国は到達する前に左翼政権の出現やコロナウイルスによる社会の改変に直面させられてしまったような気がするのです。韓国における資本蓄積の未達は工場設備などといった有形の資本に置いてではなく知的財産権などの無形の資本に於いて著しく、韓国のGDPの2割の生産を担った年もあるサムスン電子は世界各地でアップルが提訴した特許訴訟に敗れて合計金額で東京スカイツリーは建つという賠償金を支払わされることになりました。更に顕著なのは韓国社会全体、特に若い人たちが敷かれたレールの上で競走馬のように競い合うことにはやぶさかではないものの、未知の未来に挑戦する柔軟性を備えて育っているのかどうかが不明なまま、昨今の経済の落ち込みによって若年層の相当割合が社会で学ぶ機会を得られない失業者となっている事実があります。敗戦後しばらくの日本とは異なり、「我が国では大規模な実験設備を可能にするだけの研究予算がないので理論研究盛んになった。」と胸を張るような理論系科学者がいるとも聞かず、少なくともそのような科学者がノーベル賞を取ったことがありません。ともあれ、現在の韓国は正に未知の未来を自分たちで切り開くしかない状況にあります。

 

最低点の4点をつけた方へはただ一言、映画を含む芸術の賞というものは「趨勢的に水準が下がってきた」とか「作られた当初よりもレベルが上がった」とiいうように批評できるものではなく、本来年によってレベルが激しく上下するものだということを訴えておきたいです。例えば革命の動乱の中で翻弄されて身を寄せ合う男女の不倫の愛を描いてアカデミー賞美術賞を受賞した「ドクトル・ジバゴ」は本来ならばノミネートされた多くの部門の賞を総なめしたかもしれない優れた作品でしたが、同じ年に他部門にノミネートされたのが不朽の名作「サウンド・オブ・ミュージック」だったのです。ナチス・ドイツの暴虐から逃れ、子供たちを守るために亡命を企てる軍人と家庭教師上がりの後妻の継母の献身の物語に不倫の話はいくらスケールが大きく画面が美しくとも勝てなかったということです。