【映画ルーム(103 ) 蜘蛛巣城 〜 シェイクスピアの投球をセンター前にヒット 9点】
【かわまりの映画ルーム(103 ) 蜘蛛巣城 〜 シェイクスピアの投球をセンター前にヒット 9点】平均点:7.57 / 10点(Review 88人) 1957年【日】 上映時間:110分 クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=4193
【あらすじ】
戦国時代、鷲津武時は蜘蛛巣城主の都築国春に仕える武将であった。北の館の有力家臣藤巻氏の謀反平定後、僚友三木義明とともに城に召される途中、蜘蛛手の森で化生の物に出くわし、ある予言を受ける。功績を讃えられ北の館の主となった武時に、正室浅茅の方が”予言”を受けて主君への謀反をそそのかす。葛藤する武時であるが権力欲は人を変えるもので、武人の誉れ高かった彼もやがて・・・。イギリスの文豪シェークスピアの原作「マクベス」を元に、人間の権力欲と傲慢さ、心理の葛藤を見事に描いた傑作である。【オオカミ】さん
【かわまりのレビュー】
巻頭の蜘蛛巣城跡の史跡と背後に流れる能の謡(うたい)が純日本的な雰囲気が醸し、画面は一気にタイムスリップして蜘蛛巣城があった頃の迷路の様な原始林を駆ける二人の武将の騎馬の姿に焦点を合わせる。。。ここまでを事前の情報なしに見たならばこれがシェイクスピアの戯曲に基づいていた物語だとは誰も思わないでしょう。でもわたしが読んだシェイクスピアの「マクベス」の解説書には本作品が「マクベス」の映画化作品、しかも英語圏で作られたどの舞台・映画作品よりも原作のテーマと雰囲気を再現しているといる作品として紹介されているのです。そして二人の武将が運命のお告げを聞くシーン、原作では荒野で邪教のぎしきを行う魔女、本作品では原始林で系を紡ぐ山姥。。。どちらもイギリス(スコットランド)と日本の風土と文化を反映した設定ですが魔女はヨーロッパの原始宗教の産物でイングランド人はもちろんカトリックに染まった近代スコットランド人は「おやおや、こんなのが言うことを信じたらまずいのでは。。。」と思うはず。。。でも清教徒の天地だったアメリカでも魔女狩りが行われたほど土着の異教は英語国文化の根底に巣食っているのです。かたや山姥は日本古来のアニミズムの象徴的存在です。近代の自意識や秩序への信頼感と潜在意識に巣食う原始宗教のせめぎ合いが伏線として提示され、物語は武将鷲津(マクベス)と主君との関係に象徴される近代的秩序と山姥に象徴される原始的野望のせめぎ合い、そして運命をテーマとして展開していきます。舞台を前近代のスコットランドから戦国時代の日本に移したからこそシェイクスピアが意図した人類共通の真実がより効果的に炙り出されたのかもしれないと思った次第です。
10 点の人のコメント
https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=4193
8点(最頻出点)の人のコメント
https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=4193
2点(最低点)と3点、4点の人のコメント
1. 高得点つけてる人がものすごく多い完成度の高い映画のはずなのにおかしいな。かなり集中して見たんだけどぜんぜんこの世界に入れなかった。(セリフが聞き取りにくいせいもあるかもしれない。字幕つけてほしかった。)高得点つけてる人には呆れられそうだけど、ホントに全然ピンとこなかった。こういうこともあるんだなぁと自分でも不思議。人それぞれ好みの違いがあるのかな、、と考えるしかないです。期待しすぎがいけなかった?【レンジ】さん 2点
2. 黒澤映画は好きですが、この作品は特に、セリフが聞き取りずらく話がイマイチわかりにくかったです。テンポも良くないし、オカルト部分なども好きになれませんし、楽しみどころがどうにも分らなかったです。字幕つきで再見すべきでしょうか・・・。【すべから】さん [地上波(邦画)] 3点
3. 期待と不安、半々で見たが..ガッカリ..した...【コナンが一番】さん 3点
4. 《ネタバレ》 このところ、黒澤映画に出始めた頃の三船敏郎を何作か見ていたけど、現代劇より時代劇の方が世界観の中にしっくりと納まる。基本的に、武士という空気を纏っている人だったことが良く分かる。実は奥方が物の怪かと思っていたんだけど、後半は出てこなくなり、いつの間にかノイローゼになっていて残念でした。その欲深い奥方にそそのかされるところが面白かったくらいで、自分にとって他には特に観るところなし。真面目で忠勤に励んでいた武士が権勢欲に囚われ道を踏み外すような描かれ方だけど、戦国の世には普通にあることで特別とは思わない。いわゆる芝居がかったというか、歌舞伎の舞台でも観ているかのような間の取り方とか葛藤の見せ方にはちょっと辟易しました。【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 4点
5. 同監督の同じシェイクスピア翻案物なら、「乱」の方がずっと良いと思う。こちらは中途半端に定型的な時代劇の枠内に収まってしまっている。オカルティックな部分の描写も、今日では幾多の後続作品に抜かれている感じ。【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点