かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(95) ハムレット(1990) 〜 永遠のシェイクスピア 9点】

【かわまりの映画ルーム(95) ハムレット(1990) 〜 永遠のシェイクスピア 9点】平均点:6.73 / 10点(Review 15人)   1990年【米・仏・英】 上映時間:134分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=259

 

この内容全ての著作権はかわまりに帰属し、独り言を除く部分の版権はjtnew.jp に帰属します。平均点とレビューワー数はアップロード時のものです。


【あらすじ】

デンマークの皇太子ハムレットは父王の訃報に接して留学先から急遽帰国するが、待ち受けていたのは自分をさし置いて王位についた叔父と叔父との再婚を決めた母だった。母の婚礼の晩にハムレットは父王の幽霊に出会い、現王に殺された模様や無念の心境を聞かされる。以後、ハムレットは鬱々として思索ばかりを膨らませ、恋人オフィーリアやその父で大臣のポロニウスにあたって周囲を困惑させる。思い切った行動を取れないハムレットが母の軽薄を責め、ポロニウスを誤って殺した時から運命の歯車は王家の者全員を悲劇へ導くべく動き出す。

 

【かわまりのコメント】

主演のメル・ギブソンと言えば、監督作品の「パッション」は大嫌いな作品の筆頭で、アカデミー作品賞を受賞した「ブレーブハート」は途中でつまらなくなって見るのを止めたほどなのでこの作品はどうかな、と思っていたのですが、人間の思考の厚さと深さを独白だけではなく体全体で表現するメル・ギブソンの演技は素晴らしかったです。ゼフィレッリ監督はオペラの映画化を多数手がけていて映像の美しさに定評があるので、彼の監督だと軽くなってしまったら・・・というのも余計な心配で、美しい映像は他作品と同じながら、俳優陣の演技とチームワークが重厚な作品を作り上げています。あの世にいるシェークスピアもこれなら満足ではないでしょうか。脇役ながら作品の質を決定するという母ガートルートと恋人オフィーリアの演技にも脱帽しました。ただ、父王の幽霊があまり怖くなかったのが残念でした。愛する息子の前に出るのだから生前と同じ温厚な姿で、というのは納得できないわけではないですが、昼間は地獄の呵責に堪え、夜になるとさ迷い出てくるのにはそれなりの理由があるのだから、四谷怪談並みとまではいかなくても、もう少し恨めしそうに出てほしかったので-1点とします。この役は初演ではシェークスピアが自分で演じています。ローレンス・オリビエと比較して本作品のメル・ギブソンには皇太子らしい気品が欠けていると感じる方がいると思いますが、シェークスピアが描こうとした「悩める道化」としてのハムレットが強調されているようです。ゼフィレッリメル・ギブソンがオリビエ版を意識していないはずがなく、わざと違う解釈で作っているようなので、どちらが採るかは好みであって優劣はつけられないでしょう。「ケイト・ウィンスレットが好演ながらオフィーリアのイメージではない。」と言うコメントが複数ある1996年版は未見ですが、他配役が興味深いので是非見てみたいです。