かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(81) ハチ公物語 〜 街への郷愁、最良の友への賛辞 9点】

【かわまりの映画ルーム(81)  ハチ公物語 〜 街への郷愁、最良の友への賛辞 9点】平均点:7.45 / 10点(Review 67人)   1987年【日】 上映時間:107分.  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=3105

 

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【あらすじ】

1923年11月10日、吹雪の日の夜明け方に秋田県大館市郊外の農家で秋田犬のアカが出産した。父犬も純血種の秋田犬だ。アカの仔の中から秋田県庁土木課長の間瀬によって選ばれ、彼の恩師で東京帝国大学で農業工学を教える上野秀次郎教授に鉄道で一昼夜をかけて送られた子犬こそ、後に全世界の犬愛好家の涙をさそう忠犬ハチ公なのである。歴史に名を残す偉大な犬世界ランキング2位(注)のハチ公の哀しくも雄々しい一生を描く。(注) 1位は災害に見舞われ、大雪で隔絶されたロシアの村に医薬品を届けたシベリアンハスキー犬橇隊の隊長(アルファ)犬。

 

【かわまりのレビュー】

.《ネタバレ》 動画サイトで断片を見て迷わず中古のDVDを購入しました。わたしは断然オリジナル派です。何が良かったかというとストーリーとその演出よりもなにも、江戸情緒が漂う大正から昭和初期の東京の風情がモノクロの当時の写真に色をつけて蘇らせてているように感じられたことです。流れる音楽も秀逸でした。作品の時代は日本にとって激動の時代だったのですが製作者たちは第一次世界大戦世界恐慌など抜きにこの時代を描きたかったので犬を主人公にした映画を作ったのではないかと思うほど街のたたずまいから立て看板、人々の服装、地方から人々を受け入れて今では落語の中くらいでしか聞けず東京弁としては死滅しているのではないかと思われるべらんめい調東京弁などを楽しみました。そしてこの時代に現存した有名な犬と言えばもちろんハチ公です。こういう観点から作品を評価すればハチが死ぬ前に見た幻想シーンで秋田犬俳優が仲代達也に投げつけられて撮影されたシーンをリチャード・ギアの胸に犬俳優が背伸びして両前脚をのせるよく出来て自然な演技と比較してどうのなんて言えません。リメイクの舞台はアメリカ人の大半が知っているアメリカにはどこにでもある現代の都市郊外のベッドタウンです。よく知られているストーリーにも言及しておきましょう。上野教授が最後となる授業に出かける前に人間は感じない異変を感じて異常を知らせる行動を取ったり教授の通夜で位牌の前で泣き声を立てたりしたことからもハチは上野教授が亡くなったことを知っていたとわかります。人間にでさえ「この家にいると主人がまだ生きているような気がして。。。(妻)」や「ハチを見るとお父さんを思い出す。(娘)」のように自分にとって心地よい幻想を現実だと信じたい願望があります。ただ人間は「ご臨終」の意味を知っているし納棺から通夜、告別式、四十九日などの儀礼を経て好ましかった過去から自分を引き離して好ましくない現実に向き合って適応することを強いられます。犬や狼のように社会的な動物にはきっと同胞の「ご臨終」を意味する仕草か合図があってそれをハチに提示すればハチは未亡人のおじさんの家に収まったはずなのですが、悲しいことにハチには敬愛するボスである上野教授の死を犬語でもって知らされず、近親者の死に際しての犬式通過儀礼も無かったので「上野先生は亡くなったかもしれないけれどそうじゃないといい。」という思いが高じて「先生はきっと生きている。だって先生のご遺体も犬式葬儀も見てないもん。」という感じで上野教授の死の現実を受け入れずに9年間の渋谷駅通いをしたのです。ハチの愚かさではなく人間には許されない幻想を生き抜いた姿が涙を誘うのです。それにしても犬はやはり人間の最良の友人、そして秋田犬俳優とトレーナーの皆様、時代考証と美術担当の皆様、ご苦労様でした。

 

10 点満点の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=3105

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=10&TITLE_NO=3105 (9点もついでに)

 

8点(最頻出点)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=3105

 

7点(人数がなぜか少ない) と4点(最低点、ある意味ご立派)のみなさん集合!

1. この映画は、史実を忠実に映像化したものではないようだ。(1)先生には子供がいなかった。(2)上野家には当初他の犬もいて、先生の生前見送りにいっていたのはハチだけではなかった。(3)ハチ公の銅像は彼の生前に作られ、彼も序幕式に出席した。などが本当のところらしい。これを削っている、変更している部分は物語の中でよく生きている。だから「泣けるのは史実の素晴らしさであって、映画の出来とは別」という意見は少し違うと思う。惜しむらくはハチの愛想のなさで、もう少し先生といる時嬉しそうであれば大傑作になったと思う。【ひかりごけ】さん 7点

2. 当時、映画館にて鑑賞。犬好きには悲しくて感動的で、もうたまらない映画。涙しました(><)ノ【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 7点

3. まだ小学生だったと思う。友達と一緒に自分のお金で観にいった映画だった。観終わって映画館から出てきた私も友達も目を泣き腫らして真っ赤だった。私より大きな大人も殆ど目が真っ赤だった。帰りに食べたかき氷屋さんでは2人とも無言。テレビ放映で「ハチ公物語」があると聞いても悲しすぎてまた観ることは出来なかった。いま観ると随分粗があるけど、あまり気にならない。飼い主と犬の理想の形体を映画に起こしてくれたことだけで感謝。死してなお飼い主に寄り添おうとする姿は、おそらく犬を飼ってる人にとって多くの理想の『犬』なんじゃないだろうか。【どぶん子】さん [映画館(邦画)] 7点

4. 引っ越し魔な自分は実は元・渋谷区民。小学生の頃イヤと言う程、道徳の時間で散々勉強した「ハチ公」の話は今でもしっかりと脳裏に焼き付いてしまい、先生に「ハチに誇りを持て!」・「渋谷区民としてハチを自分の問題だと思え!(←コレが良くわからない…)」と言われ、スッカリ洗脳されてしまいました。だからと言うわけでは有りませんが、先生からもらった渋谷区のハチ公資料と映画のギャップが…(苦)。確か、あんなにキレイな町並みでは無かったような気がするし、美化され過ぎて元・渋谷区民としてはどうも納得が行かない…。それに、あまりにも有名過ぎる実話な物語なだけに、逆に映画では感動出来ませんでした。本物のハチの為に敢えてこの点数で…。【_】さん 4点

 

【独り言】

最低点をつけた【  】さんは、そうか元渋谷区民でいらっしゃいましたか。「渋谷区民」を「日本国民」に書き替えると戦前の「大日本帝国万歳」を戦後になって(自己)批判している○日新聞の社説みたいです。【  】さんは「駅前はこんなに綺麗ではなかった」とおっしゃっていますが昭和一桁の渋谷駅前をご存知なのでしょうか? 閑話休題。 わたしが高校から大学にかけて暮らした街、今でも母が住んでいる街から数年前にノーベル賞受賞者が出て駅前に「祝、〇〇教授」という横断幕が張られました。「我が街のヒーローを誇りにしましょう」と言わんばかりでした。因みにその教授は住居と職場の両方が同じ市内です。だからと言って市民全員の知能が高くて優れているなんて誰も思ったりはしませんし、勢いに乗じて隣の市に攻め込んで隣の市を併合しようなんて話も出てはいません。

 

【参考動画】

https://youtu.be/M-gUq3opk6g (全部英語だけれどこの動画を撮るためにわざわざ東京渋谷に来た外国人もいたということで。。。

https://youtu.be/UhnvjMp1OiI (こちらは犬語で喋っているので犬好きには字幕不要)

https://youtu.be/v8gVAp5tsWo  (BGMはラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」)

https://youtu.be/3OB1AdAMIc0 (セピア色に変色した写真がナイス)

https://youtu.be/pcHdZmQElEk (まだあるモノクロ写真)

https://youtu.be/pQHjr31p_DE (映画作品ハイライト)

https://youtu.be/5jDDv8kS320  (まだあるモノクロ写真。子犬の頃はあまり犬相がよくなかった)

https://youtu.be/FQS17u0bxO0  (BGMは作品のテーマソング「ガラスの観覧車」)

https://youtu.be/hKMahfVwnb4 (オリジナル作品ハイライト・リメイクBGM・スペイン語字幕)

https://www.youtube.com/playlist?list=PLvFSmYayhzi0FCQMMjvvpMjFRbBcj_NjE (極めつけ)

以上