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【映画ルーム(79) 紅夢 〜 旧世界の残夢 8点】

【かわまりの映画ルーム(79) 紅夢 〜  旧世界の残夢 8点】平均点:8.30 / 10点(Review 37人)  1991年【香・中・台湾】 上映時間:125分.  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。  https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=804


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【あらすじ】

父が急死したため大学を中退した19歳の頌蓮(コン・リー)は継母が勧めるままに金持ちの第四夫人(妾)となる。そこで頌蓮が出会ったのは古い家のしきたり、そして笑顔をうかべながら本心では憎みあい、お互いを出し抜こうとたくらんでいる三人の妻(正妻と二人の妾)たちだった。教育のある頌蓮は好きでもない夫の関心を引くための努力を始めのうちはためらうが、やがて自分の宿命を悟り、他の三人の妻たちの思惑を理解するようになっていく。しかし、頌蓮の努力や策略は全員を意外な方向へと導いていく。

 

【かわまりのコメント】

強い女の役が好きそうなコン・リーが地のままでやっているような演技がとてもいい。チャン・イーモウ監督の映像美にかける執念がこの映画からも伝わってきて、とにかく映像が美しい。コン・リーの主人公もライバルの第三夫人も美しい。この上、正妻と第二夫人もきれいだったらこの映画は中国モードのファッション・ショーになってしまうでしょう。主人公が大学中退だということはストーリーの時代がかなり現代に近いということで、もう少したてば毛沢東中華人民共和国建国を高らかに歌いながらこういった前近代的な妾制度を廃止し、主人公たちを解放することになるのだけれど、もちろんそんな明るい結末ではないからこそこの映画は世界中で上映されるような芸術度を達成しているのです。閉鎖された環境の中で衣食住等物質的には何一つ不自由なく、正にモルモットのように飼われている女たちがどう考え、どう行動するかを冷徹な目で見つめている、美しくかつ残酷な作品です。日本語の題名は「紅楼夢」とまぎらわしいですね。

 

10 点の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=11&TITLE_NO=804

8点(最頻出点)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=804

6点(最低点)の人のコメント

1. 赤い提灯が眩しくも、女性達の哀しみを映し出している様に見えました・・・コン・リー、綺麗ですねぇ~【リリー】さん 

2. チャン・イーモウって、何を撮っても「傑作」になってしまうなあ。そして、特にこの映画で顕著なんだけど、彼の駆使する色彩美は、「中国的」とか「アジア的」というより、明らかに西洋的な「マニエリスム」の洗練へと向かっているのでは。この点を批評家たちも指摘していないから、ここで提起しておきます。で、それはまあいいんだけど、この映画にはどこか、人間たちをまるで昆虫か何かのように「観察」するといったような、極めて冷ややかで残酷な眼差し(つまり、人の生死に頓着しない「神」の視点…?)があって、確かに見事な映画だとは認めるけれど、個人的にどうしても好きになれない。まあ、チャン・イーモウの初期作品はみんなそうなんだけど。【やましんの巻】さん 

3. おもしろかった。赤いランタンがすばらしかった。【tulet】さん

4. 幻想的で静かで品のある映画なんだけど、少し退屈になってしまった。【miumichimia】さん

 

【独り言】

最低点が6点だなんて、やはりこの作品は傑作とまではいかなくても充分に秀作か佳作の域に入ります。最低点を付けた人のコメントは全てこの作品の良さを語っているようです。特に【やましんの巻】さんの指摘はそういった視点で人間社会を見ることが好きな人には必見の作品だということを示してくれています。

 


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