かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(49) 嘆きのテレーズ 〜 抑えたトーンの下にうごめく情念 9点】

【かわまりの映画ルーム(49) 嘆きのテレーズ  〜 抑えたトーンの下にうごめく情念  9点】平均点:7.35 / 10点(Review 20人)   1952年【仏・伊】 上映時間:107分  クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。

 

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【あらすじ】

フランス南西部のリヨンで洋裁店を経営する未亡人ラカン夫人と一人息子カミーユの家に嫁いだ孤児のテレーズは常に満たされなかった。夫が病弱でテレーズは姑にこき使われるただ働きの店員兼看護婦同然だったからだ。ある日テレーズは外出中に倒れた夫を家に担ぎこんだ屈強な男ロランに惹かれ、すぐに二人は駆け落ちを算段するほど親密になる。しかし事実を知ったラカン母子はパリの親戚の家にテレーズを軟禁して二人の仲を引き裂こうとする。テレーズを取り返すためにロランは車で彼女と夫が乗るパリ行きの列車を追い、そして・・・。

 

【かわまりのレビュー】

黒澤明監督のモノクロも墨絵のようで美しいですが同作品はヨーロッパのモノクロ作品の美しさを存分に見せ付けてくれます。主演のシモーヌ・シニョレが美しいのは言うまでもない・・・と言いたいところですが、体全体はあくまでも豊満で肉感的なのに顔が大写しになると男のように見えました。でも、他のどのような女優さんでもテレーズの満たされない寂しさは出なかったでしょう。嫁と姑の確執も特に後半以降、姑役の年配の女優さんが鬼気迫る演技で見事に表現していました。周囲からは羨まれているに違いない安定した生活の中で欲求不満に陥っているテレーズと彼女に言い寄るセクシーな男の話は、残業続きで疎遠な夫に愛想をつかす金曜日の妻たちの走り、そして金妻モノをもっと極端にした形で展開します。ただ、「猫の目をした(テレーズの言葉)」水兵あがりの男が出てきた頃から少しつまらなくなりました。結末も、私の私見ではありますが、陳腐なので-1とします。原作者ゾラは人間の情欲を見つめた作家でしたが、物語としての結末はどうでもいいのかもしれません。邦題「嘆きのテレーズ」の「嘆き」はないほうがいいと思います。

 

10点と9点の人のコメント

1. 「天井桟敷の人々」、「悪魔が夜来る」、「北ホテル」、「ジェニイの家」のマルセル・カルネ監督のもう一つの代表作。シモーヌ・シニョレ、シルヴィ(→「舞踏会の手帳」での名演も忘れられません)…、名優達の名演も光り輝きます。フランス第2の都市、リヨンでのロケ、カメラワークも素晴らしい。ラストにかけて一気に緊迫感は高まり、ラストシーンでは、はっとさせられます。原作は、「居酒屋」、「女優ナナ」の巨匠エミール・ゾラの「テレ-ズ・ラカン」、自然主義文学の傑作を映画のリアリズムで表現した傑作です。【チャターBOX】さん [映画館(字幕)] 10点

2.  カルネ監督でエミール・ゾラ作とくれば面白くないはずがありません、期待通り。人間が人間を殺しては終わりです。フランス映画らしく残酷で暗い結末のラストのはずなのに、謂いつけ通りに破滅の道へと進むことも知らず明るい日差しの中、一目散に郵便ポストに向かう少女の姿がなぜか凄く印象に残っています。  【白い男】さん [地上波(字幕)] 9点

8点の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=9&TITLE_NO=4987

7点(最頻出点)の人のコメント

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?POINT=8&TITLE_NO=4987

5点(最低点)の人のコメント

1.  《ネタバレ》 例えば、夫が転落したときに、ひたすら列車の走行音だけが響き渡り、周囲にも何も変わったことはなく、「あれ?今のって本当に起きたことなんだっけ?」と感じさせてしまうところとか、凄くリアリティがあってゾクッとするのです。そういう箇所はほかにもあります。なんだけど、全体的には、未練がましい人たちがうだうだ進めている比率の方が高く、スリリングさが継続しませんでした。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 5点

2.  《ネタバレ》 境遇のせいで不幸な結婚を強いられたと嘆きながら、出会ったばかりの男と簡単に両思いになり、あげく旦那を無視しまくる表情も中身もない怖い顔の嫌な女テレーズと、間男のクセにイチイチ逆ギレして乱暴なクソマッチョに、病弱で傲慢でヘナチョコ他力本願男、自分が結婚させた癖に嫁を見下すババア、夢の実現のためにと言い訳しながら他人を脅迫するチンピラ・・・うーんフランス人らしい・・・というか、どいつもこいつもイラつくっ! お前ら全員一生嘆いてろっ!
イライラ感満載でしたが、唯一の無邪気な少女の忠実な仕事によるオチにはスッキリさせられました。

【すべから】さん [DVD(字幕)] 5点

 

 

 

【独り言】

 


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