かわまりの映画評と創作

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【映画ルーム(36) 1000日のアン 〜 国家の命運を変えた女性 10点】

【かわまりの映画ルーム(36) 1000日のアン  〜  国家の命運を変えた女性  10点】平均点:8.25 / 10点(Review 4人)  1969年【英】 上映時間:145分. クレジット(配役と製作者)などについては次のURLをご覧ください。

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【あらすじ】

イギリスがいまだ弱小国だった16世紀初頭、スペインの王女キャサリンを妃としたイギリス王ヘンリー8世は貴族の娘アン・ブーリンを見初め、王子を産まない年上の妃キャサリンと離婚しようとする。ヘンリーの決断はローマ法王の精神的支配下にあった全ヨーロッパの政界に波紋を投げかける。恋人と別れ、王の愛人の座を拒み、女王の座を狙ったアンはヘンリーを動かし、新しい英国の構築を画策する。女王としての在位期間はたったの3年間ながら、後に日の沈むことのない王国を築くエリザベス一世の母となったアン・ブーリンの半生を描く。

 

【かわまりのレビュー】

映像と衣装の美しさ、豪華さで40年も前に作られたという古さを全く感じさせない作品です。リチャード・バートンのヘンリー8世は、「クレオパトラ」の中でレックス・ハリソンが演じたジュリアス・シーザーや「イル・ポスティーノ」の中でフィリップ・ノアレが演じたパブロ・ネルーダと並んで名優そっくりさん出演のチャンピオン格じゃないでしょうか。(ちなみに「クレオパトラ」の中でリチャード・バートンが演じたアンソニーはたいしたことないです。)アン・ブーリン役の女優さんの悪魔っぽいかわいさも際立っています。鑑賞の鍵となるのはやはり、ばら戦争などの内戦で疲弊した弱小国だったイギリス(イングランド)がヨーロッパの他の大国からの独立を保って次世代のエリザベス一世の下で日の沈まぬ国になったという運命のからくりです。「国王は男でなければならない。」というヘンリー8世に可愛いがられて成長したエリザベス一世が色恋を全く拒む女性君主になってスペインの無敵艦隊を破ったことは、生母アン・ブーリンと前妃キャサリンとの確執の因果でしょう。前妃キャサリンはスペイン史上人気ナンバー・ワンのパワー・カップル、イベリア半島からイスラム教徒を追い出してスペインを統一し、コロンブスの航海のスポンサーも務めたカスティラ女王イザベルとアラゴン王フェルディナンドの娘で、元々はヘンリー8世の兄のところに嫁いできて兄の死後、弱小国イギリスが大国スペインに頭が上がらなかったためにヘンリー8世が彼女の二人目の夫にさせられたという事情もあります。だから、キャサリンの娘でヘンリー8世の後を継いだメアリー女王は母方の宗教のカトリックに深く帰依し、映画「エリザベス」の中で描かれているように、国教会に属した異母妹のエリザベスを虐待したのです。こんなことに想いをめぐらせながら鑑賞すれば二時間半はあっという間に過ぎてしまいます。質、長さともに久々に見た大河ドラマでした。

 

全員集合

https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=9474

 

【独り言】

十字軍遠征で運送や物資の調達を担ったイタリアの都市国家はとうの昔にルネッサンスの息吹に目覚め、兄王が逝去したせいで押し付けられた兄王の未亡人はイベリア半島イスラム教徒から奪還した後で強大な権力を掌握してスペイン・ルネッサンスの黄金時代を築いたパワーカップルのイザベルとフェルディナンドの愛娘、ドイツとフランスではそろそろカトリックプロテスタントの対立が。。。という時代にローマ法皇に向かって「兄から引き継いだ奥さんは年上だし今から子供をたくさん作れそうにもないから。。。」と言って離婚の許可を求めたヘンリー八世に対して決然として愛人の地位を拒んで女王の座を要求したのが本作品の主人公のアン・ブーリンでした。今なら亡くなった兄弟の奥さんを引き継ぐといったことは、その奥さんがいかに権力者の娘であっても自動的には成立しませんが、当時はいろいろ難しかったのです。切らないといけないいろんなしがらみを一刀両断に断ち切ってヘンリー八世にローマ法皇からの決別と英国国教会の創設を促したのgこの女性だったのです。

 

 

【参考】

イングランド王ヘンリー八世 (ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC8%E4%B8%96_(%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%8E%8B)?wprov=sfti1


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https://jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?TITLE_NO=3573